昭和2年(15陽会)1927年

NO8

《武 陽》
[選抜野球大會長野縣遠征之記]

 我部は長野市の招待に依り、鐵路遥々遠征の途に上る。馬場先生、島津先輩に引率さ
 れて我等一行十四名八月五日、神戸出發、翌六日早朝長野着、直ちに旅宿に着く。

◎一回戰、横濱商業戰 昭和2年8月7日(日)長野體育協會グラウンド
 一日の休養を得て我等元氣旺盛なり。午後零時二十六分。高橋(球)佐々木、熊谷三
 氏審判の下に吾が軍の先攻にて戰端は開らかれぬ。

第一回。我が軍眞鍋先づ三遊間を抜いて出で、丸山の投匍に封殺、大橋左前安打に續きしも田中三振、藤池捕前ゴロ。
△横商=一番蔭山一飛、坂口二匍、山本中飛に兩軍空し。

第二回。我が軍池田先づ三壘を誤らし、太田の安打に送られ龜山左飛、小林遊飛、我が軍優勢なれども後援續かず。
△横商=渡邊ニ飛、林投匍、小池遊飛に退く。

第三回。我が軍果然總攻撃を開始す。打者は一番眞鍋なり。再び三遊間を破って出で丸山死球に續く。大橋輕く打って二壘を誤らして滿壘となり好機は至る。四番田中期待に背かず左翼にクリンヒットを飛して眞鍋を還す。藤池投匍に丸山封殺、池田中飛に二死となりしも太田二壘を破って大橋を迎へ、投手暴投に田中も生還、小林の右飛に止む。
△横商=大河原、中村三振、石黒一壘邪飛に斃る。大橋の投球は敵の虚を衝いて辛辣を極む。

第四回。眞鍋三振、丸山右飛失に出でしも大橋一壘邪飛、田中三振。
△横商=蔭山三振、坂口四球に初めて走者出づるも山本遊匍に封殺、渡邊二飛に振はず。

第五回。我が軍藤池三匍一失に出でしも、池田二飛、太田二匍、龜山三振に空し。
△横商=初めて振ふ、林三振後小池死球に出で大河原三振して二死、無為と思はれたが中村左前ヒットし盗壘して走者三二壘に據る、好機が來た。果然石黒右中間に二壘打して小池、中村勇躍生還、續く蔭山又中堅に安打せしも坂口三振して退くも彼二點を入れた意氣昂し。

第六回。小林四球、眞鍋のバント三壘手一壘に悪投して走者一擧三二壘に據る。而も無死なり。丸山遊匍すれば小林牙城を突き、大橋二遊間を見事に抜いて眞鍋生還、田中投匍に丸山、大橋進壘、藤池のバント丸山何事ぞ本壘に刺され池田の二匍に我攻撃止む。
△横商=四番山本四球、渡邊遊匍失に三進、林一飛、果然スクヰズは行はれた、小池バントすれば大橋取って捕手に投ず、田中球高くタッチ間に合はずと見るや果斷よく小池を一壘に刺す。石原遊匍。

第七回。太田投匍、龜山三振、小林二匍。
△横商=中村のバット音あり、然れども大橋飛躍はっしと止む、石黒二匍、蔭山遊飛。

第八回。我が軍一番眞鍋第一球を左翼に飛球すれば野手の後退及ばず二壘打となる。丸山二匍に三進。大橋三振、田中三壘に飛球を揚ぐれば三壘手遊撃寄り合って落し眞鍋生還、藤池中飛。
△横商=坂口一匍、山本左飛、渡邊死球を得しも林遊匍に空し。

第九回。池田左飛、太田も左飛に二死、波戸崎、龜山に代って憤打すれば右中間二壘打となる。小林四球に續きしも眞鍋一邪飛して退く。
△横商=大橋奮闘、小池、石原、中村の三者を三振に打取る。
六對三!我が軍勝つ、時に午後三時三分なりき。

 神戸二中 003 002 010=6
 横濱商業 000 021 000=3


 〔二 中〕 打得安二犠盗三四失
       數點打打打壘振球策
 3 眞 鍋 633100000
 5 丸 山 400000010
 1 大 橋 512000100
 2 田 中 511001200
 8 藤 池 500001000
 4 池 田 500000000
 7 太 田 500011000
 9 龜 山 401100211
 6 小 林 310000021
     計 4267213542

 〔横 商〕 打得安二犠盗三四失
       數點打打打壘振球策
 6 蔭 山 401000100
 5 坂 口 300000113
 1 山 本 310000010
 2 渡 邊 300000010
 3  林  400000101
 8 小 池 210011110
 7 石 原 400000300
 4 中 村 411001002
 9 石 黒 301100200
     計 3033112946

《武 陽》
◎準優勝戰對愛知一中
 昭和2年8月8日(月)長野體育協会グラウンド
 第一回戰に横濱商業軍を倒して意氣揚れる我が軍は八日、東海の雄愛知一中軍と覇を争ふことゝなりぬ。
 午後三時、高松(球)佐々木、熊谷(壘)三氏審判の下に敵に先攻を譲って戰
端は開かれぬ。

第一回。愛知=中島左飛、二番太田四球に出づ、續いて※鴃=左の鳥が馬辺=作字すること。も死球を喫して走者早くも一二壘を占め、四番服部遊撃ヒットして滿壘となる、酒井左翼に犠飛して太田生還、鈴木左中間二壘打して※鴃を還し服部又本壘を突けば野手の好投に刺さる、されど彼二點を先取して意氣揚りぬ。
△我が軍眞鍋先づ遊撃を誤らして出でしも丸山一飛、大橋投匍に二進せしも田中の三匍に止む。

第二回。愛知=荒井左飛太田好捕す。市岡の遊匍小林好投すれど眞鍋失し吉田四球、中島も亦四球に續きしも太田三振、※鴃捕手邪飛に退く。
△我が軍壓迫され勝なり。藤池遊匍、池田遊匍、池田遊匍すれば一壘ミスして池田一壘に安全なるも太田の投匍に封殺され、龜山三振して無為、我が軍振はず。

第三回。愛知=服部遊匍、酒井投直、鈴木投匍。
△我が軍小林遊匍、眞鍋三匍、丸山遊飛。

第四回。愛知=荒井投飛、市岡三壘邪飛球、吉田二飛。
△我が軍大橋遊撃内野安打に出でしも田中の遊匍、彼良く止めて大橋を封殺しぬ、續く藤池味方の不振に奮起して第二球を左前にクリンヒットし好機初めて我が軍に來る。池田立つ長棍一打すれば見よ其のクリンヒットを、遂に滿壘となりぬ。一死なり、太田選球よく四球を奪ひ、田中本壘に入る。次に龜山立ちしも不甲斐なくも三振、小林強匍に遊撃を突けば彼あせらず鮮かなる守備に太田二壘に封殺されて止む。

第五回。愛知=中島四球、太田三振、※鴃遊匍に二死となりしも服部三壘を突き其の一壘低投、一壘手のハンブルする間に生還、酒井左飛、敵更に我が凡失に一點を加ふ。
△我が軍眞鍋投匍、丸山の右飛効を奏せず、大橋遊匍。

第六回。愛知=鈴木二匍、荒井四球に出で市岡捕邪飛、吉田三振に無為。
△我が軍田中痛打一振すれば健棒に戞然の音あり、球は遊撃頭上唸を發して飛びあはや安打と思はれしに服部好守して發止、掌中に刺止む。敵ながら天晴なり、藤池、池田の打棒徒らに投匍を呈して退く。

第七回。愛知=中島捕邪飛、太田遊直すれば小林自若よく手中に収む、鮮かなり。※鴃=鳥辺が馬=投匍。
△我が軍太田三振、波戸崎投匍、小林二匍。

第八回。愛知=服部一邪飛、酒井遊飛、鈴木四球、荒井三振、大橋の腕今に到って辛辣を極め來る。
△我が軍眞鍋セイフティバント成らず、丸山投匍、大橋遊匍。

第九回。愛知=市岡四球を得て出壘せしも小山捕邪飛に斃れ中島投匍、太田三振して退く。
△我が軍最後の攻撃なり、いざ緊れと起てば田中の熱球服部亂れず、藤池四球を得て出でしも續く池田が三振、太田投匍して後援なく遂に武陽軍立たず。
三對一遂に敗れて退きぬ。

 愛知一中 200 010 000=3
 神戸二中 000 100 000=1

 〔愛 知〕 打得安犠盗三四失
       數點打打壘振球策
 5 中 島 31001020
 4 太 田 41000310
 9 ※鴃  31000010
 6 服 部 40101001
 1 酒 井 40010000
 8 鈴 木 30100010
 2 荒 井 30000110
 7 市 岡 30000010
 3 吉 田 30000111
     計 303212582

 〔二 中〕 打得安犠盗三四失
       數點打打壘振球策
 3 眞 鍋 40000002
 5 丸 山 40000000
 1 大 橋 40100000
 2 田 中 41000000
 8 藤 池 30100010
 4 池 田 40100100
 7 太 田 30001110
 9 龜 山 30000200
 6 小 林 30000000
     計 321301422

 我れ等四月より闘遂に覇業成らずと雖も、至誠を盡し得て我が部の本懐とする所なり、唯夫れ天下の二中、永く地中に在るべからず、堂々兵を進めよ後輩よ、必ずや覇を成せ、實に後輩に望むところは此れなり。

16陽会(昭和3年卒)
 田中 誠二    捕手
 入江 常雄    
 吉本 義夫    投手
 佐藤 了二    
 中野 栄造    左翼
 郷  三郎    
 真鍋 宗次    一塁
 森山 朝男    左翼
 菊池 太郎    中堅
 亀山  昴    左翼
 高橋 重雄    
 小林純次郎    中堅