昭和2年(15陽会)1927年

NO3

〈神戸新聞〉
昭和2年4月9日(土)明石公園グラウンド 午後3時=5時20分

   (敵失)000 002 102=5
   (安打)002 100 000=3
 御影師範 003 201 000=6
 神戸二中 012 031 03A=10

   (安打)001 001 03 =5
   (敵失)012 000 30 =6

 〔御 影〕 打得安犠盗三四失
       數點打打壘振球策
 6 山 口 41102112
 7 山 本 50000100
 3 大 西 30100010
 5 眞 邊 41001102
 8 淺 原 41100101
 4 谷 口 31000110
 2 蔭 山 30010300
 9 神 澤 21000010
 PH 山 田 10000000
 1 伊 藤 31000011
     計 326313856

 〔二 中〕 打得安犠盗三四失
       數點打打壘振球策
 3 眞 鍋 32001121
 4 池 田 32110111
 2 田 中 30011000
 6 小 西 40000002
 8 藤 池 43201000
 1 大 橋 40100000
 7 森 山 31102110
 5 丸 山 41002101
 9 龜 山 21011010
     計 3010538455

 △二壘打=大橋 △暴投=伊藤2 △捕逸=田中、蔭山 △試合時間=2時間10分

第一回。御影=山口三振に斃れ山本三壘ゴロ、大西一壘ゴロにやむ。
△二中=眞鍋右翼フライに討ち取られて後、池田四球を選んだが田中の三壘ゴロにフォースアウトされ小西の左翼フライに波瀾なし。(兩軍零) 

第二回。御影=眞邊三振を喫し淺原投前ゴロ、谷口三振に凡退。
△二中=藤池三壘ゴロ一壘高投に一擧二壘に進み大橋一壘邪飛後の二つのパスボールに樂々と生還、續く森山、丸山ともに三振を喫して退く。(御影零、二中一)

第三回。御影=蔭山三振ののち神澤、伊藤ともに四球を選んで出でパスボールに走者各進壘、山口の遊二間ヒットに神澤還り山本三振したが大西の遊三間ヒットに伊藤、山口踵を接して悠々生還、眞鍋二壘フライ。この間御影三點を入れて二點を勝越し意氣昂し。
△二中=龜山左翼フライの後眞鍋四球に出で池田の左前ヒットに續きこの時投手二壘に牽制球を投じたが高過ぎこの球を中堅手後逸したため眞鍋、池田ともに一擧ホームを陥れ二點を加へ同點となる。續く田中遊撃ゴロ、小西中堅フライ。(御影三、二中二)

第四回。御影=淺原三壘側内野ヒット、谷口四球にともに出で蔭山投前犠牲バントに進壘、神澤の遊撃ゴロに淺原ホームを強襲して成功し神澤二壘を奪はんとしたが捕手からの好投に刺されその間谷口もホームを強襲して生還、二點を加へ伊藤三壘ゴロ。
△二中=藤池三壘ライナー、大橋遊撃ゴロ、森山二壘フライに凡退。(御影二、二中零)

第五回。御影=山口中堅フライ、山本投前ゴロ、大西三壘ゴロ。
△二中=丸山遊撃ゴロの後、龜山四球に出で二つの連續ワヰルドピッチに三進し眞鍋四球を選んでスチールす、この時池田投前に絶好のバントをなして龜山を還し自分も生く、續く田中投前犠牲バントに眞鍋、池田ともに還り三點を得、またも二中一點を勝ち越す、小西中堅フライ。(御影二、二中三)

第六回。御影=眞邊二壘ゴロ一壘抵投に生きてスチールし淺原三振の後谷口の一壘ゴロに三進し一壘からの牽制球高投に生還しまたも同點となる。
△二中=藤池の投前バント内野ヒットとなりスチールして後、大橋の投前ゴロに三進し森山四球に出でスチールせんとするを捕手牽制せんとして高投、その間に生還、その後森山二壘にタッチされ丸山三壘ゴロに退く。(御影一、二中一)

第七回。御影=神澤三壘ゴロ、伊藤の三壘ゴロを丸山ハンブルし生かし山口四球の後、山本の投前ゴロに伊藤三壘にフォースアウトされ山口三盗せんとし辷り過ぎて刺さる。
△二中=龜山中堅フライ、眞鍋三振の後池田遊撃ゴロミスに出で續いて二進せんとするを一壘手防がんと二壘へ投げたが遊撃手落球したゝめ生き田中の三壘ゴロ一壘高投に三進したが小西遊撃フライにやむ。(兩軍零)

第八回。御影=大西四球に出たが眞鍋の投前ゴロに封殺され淺原の三壘ゴロに眞鍋二進したが谷口二壘フライ。
△二中=藤池左前ヒットに出で大橋の左翼右二壘打に三進し蔭山の二壘越えテキサスに藤池還り丸山の投前バントに大橋ホームに刺されたが續く龜山捕前犠打に森山また還り、この隙に龜山二壘スチールを試みて成功し、その間に丸山もホームスチールを企てゝ生還三點を加へ大勢既に決す。なほ眞鍋の投ゴロに龜山三進したが池田の三振にやむ。(御影零、二中三)

第九回。御影=四點も勝ち越されてゐるので決斷して立ち蔭山三振の後ピンチヒッター山田遊ゴロ一壘悪投に一擧二進し伊藤遊撃ゴロミスに三進したが山口の遊撃ゴロにホームに憤死し山本三壘ゴロに万事休し十對六にて二中勝つ。

《武 陽》
▽準優勝戰 對姫路中學

 昭和2年4月17日(日)明石公園グラウンド 午前11時20分=午後1時20分

▽準優勝戰
 神戸二中 100 000 011=3
 姫路中學 000 211 10A=5

 (ベンチコーチ)稻田先輩

 弱者倒れ、強者存して今や残るところは、我校、姫路中學、神港商業及び甲陽中學の四強剛である。今日我等は姫路中學と雌雄を争ふことゝなりぬ。彼に水田投手あれど良捕手なく、我が大橋、田中のバッテリーに及ぶべくもない。
 春酣なる四月十七日、午前十一時二十分小柴(球)郭(壘)兩氏審判の下に我軍の先攻にて戰端は開かれぬ。

第一回。我軍=眞鍋先づ三壘を誤らして出で、連盗して直ちに三壘に據る、然れども續く三者三振して第一の好機を逸せしは不甲斐無し。
△姫中=西投直、村上三進、椋本四球、續く三浦左前安打せしも水田投匍に姫中また好機逸す。

第二回。我軍=藤池三壘を突けど彼亂れず。六番大橋四球を得て出壘、森山の二匍に二進し投手暴投に三進す。續く丸山此の時なりと奮起一番右翼を破って大橋を還す、龜山三振。
△姫中=永尾二匍、黒田投匍、福尾三進。

第三回。我軍=眞鍋遊飛、池田三振、田中投手の後に飛球を送って安打し駿速よく連盗三壘に據って本壘を虎視すれど小西投匍に空し。
△姫中=竹田三邪飛、西三匍、村上三振。
◎我軍斷然敵を壓してゐる。大橋は好調子だが球に威力がない。水田投手の投球は非常な球速と、凄いアウドロとを以て三振五を奪ってゐる。

第四回。我軍=藤池三匍、大橋好打中前安打に出でしも森山右飛、丸山二匍に空し。
△姫中=椋本三振、三浦四球盗壘し水田中前安打に三浦三進、永尾三匍に三浦還り水田又ホームスチールに成功す、黒田四球、福尾一邪飛に終る。

第五回。我軍=龜山三振、眞鍋二匍、池田慎重右前安打せしに田中立つやラストボール次球を奮打すれば、彼のバットに快き響あり、左翼頭上を越すと思はれしに福尾好走好捕して止みぬ。
△姫中=竹田投匍、西遊撃安打、村上右翼大飛球龜山後退よく手中にしながら落してセーフ椋本の三匍に一點を加へ三浦三匍。

第六回。我軍=小西二匍、藤池投匍、大橋三振。
△姫中=水田遊失二盗し投手牽制球を池田三壘に高投して水田還り、永尾三振、黒田二匍、福尾、竹田四球を得れど西遊飛。

第七回。我軍=奮起すれど森山三振、丸山二匍、龜山三振に振はず。
△姫中=村上三振、椋本遊匍一壘悪投に生き離壘して刺さる。三浦四球盗壘し水田の右翼二壘打に生還、永尾遊匍。

第八回。我軍=眞鍋投匍、池田中前に安打して盗壘に三壘に據り、田中三振後小西の一匍失に生還、藤池三匍。
△姫中=黒田左飛、福尾三直、竹田中堅飛球。

第九回。我軍=大橋三匍一壘低投に二壘に進み、森山の二匍に三進し丸山の三匍に生還、續く波戸崎我軍の不振に憤起して起ち、ボックスに入りて長棍一打すれば左翼越の二壘打となり意氣虹の如し。

 續く眞鍋又奮起して一−三後を一打すれば右前クリーンヒットとなり我が軍の意氣益々揚る。次いで池田責任を負ってボックスに入る。此の好期を逸すれば武陽軍復立たず。決意を眉宇に漲しつゝ悠然たるや、水田又あせらず。既に二−二なり、吁投ぜられぬ熱球は池田のバット又も徒らに空に流れ捕手のミットに音ありしのみ。

 吁我が軍敗る。思はざる敗北なり、唯我等夏日の奮闘を誓ふあるのみなりき。
吁五對三!武陽軍明石城下に花と散るとき、思はざる戰勝に姫中軍の狂喜するあり。願はくば捲土重來光榮の日近からんことを。