大正4年(3陽会)1915年

NO6

【神戸二中、第1回全國野球大會に出場】
            第1回全國野球選手権大会

        早稲田中 2                        
            早稲田中 1                
        神戸二中 0                    
                    秋田中 1        
        秋田中 9                    
            秋田中 3                
        山田中 1                 京都二中  
                             
和歌山中 15                              
    和歌山中 7                      
久留米商 2                          
            和歌山中 5              
広島中 7                          
    鳥取中 1                        
鳥取中 14                 京都二中 2        
                           
        京都二中 15                        
            京都二中 9                
        高松中 0                    
                               

【第1回全國野球選手権大会】
 大正4年8月
18日(水)豐中球場  午後3時20分開始 5時20分終了
 (審判)球審・都築 壘審・町田、小西、陪審・折田

▽2回戰
 早稻田實 000 011 000=2
 神戸二中 000 000 000=0
 

       打安失        打安失
 〔早稻田實〕數打策  〔神戸二中〕數打策
 2 岡 田 500  6 田 中 400
 4 三 川 401  2 睦 好 300
 1 臼 井 320  7 兒 島 400
 7 石 崎 300  1 今 村 410
 9 霜 島 400  5 上 村 411
 6 石 井 311  4 箸 倉 310
 8 中 澤 200  9 藤 原 311
 3 平 田 310  8 橋 本 300
 5 宮 川 310  3 村 田 301
    計  
3052     計  3143 

   残盗犠四三  残盗犠四三
     牲死     牲死
   壘壘球球振  壘壘球球振
   96356  50014
      今今     臼臼
      村村     井井
 

 △第二神戸中學校メンバー
 〔投手〕今村 幡象
 〔捕手〕睦好 安夫
 〔一壘〕村田 雄二
 〔二壘〕箸倉 史樓
 〔三壘〕上村隆之助
 〔遊撃〕田中 勘吾
 〔左翼〕兒島 一士
 〔中堅〕橋本 一男
 〔右翼〕藤原 英夫
 〔補欠〕岸本 胤夫
 〔同 〕松夫 亥一
 

〔試合経過〕
第一回 早實の第一打者岡田右翼飛球に死し三川三振し二死の後臼井右翼に安打し出でしが石崎三振して二壘を踏むに至らず
▲神二中の田中投手ゴロに死し睦好四球を利して得しも兒島左翼に飛球を呈して憤死し今村の遊撃ゴロ又睦好を二壘に殺して最初のインニングを終る(早實零=神二中零)

第二回 早實の霜島二壘飛球に死せし後石井は四球に中澤は死球に出で平田の犠牲球に送られて二壘と三壘に據り後續の打者宮川多大の期待を持ってボックスに立ちしも投手に直球を呈し今村片手に好捕して危機を脱す
▲神二中、上村一壘の壘側を抜く安打に出でしも盗壘を企てゝ二壘に刺され箸倉、藤原遊撃と二壘に凡打して止む(早實零=神二中零)

第三回 早實の打順元に歸り一番打者岡田再びボックスに現はれしが遊撃に小飛球を呈して死し三川四球を利して二壘を盗みしも臼井バントに殪れ石崎三振して立往生に終る▲神二中の橋本、村田二壘ゴロに死し、田中投球跳球に死し依然兩軍とも得點なし(早實零=神二中零)

第四回 早實の霜島ゴロにて遊撃を襲ひ一壘手の失に生きしが石井の二壘直球に併殺を喫し中澤又二壘ゴロに敵二壘手箸倉に名を成さしむ
▲神二中の睦好遊撃飛球に死し兒島同じ遊撃にゴロを送り遊撃の暴投により二壘に立ちしが今村の大飛球は左翼手の好捕する處となり上村二壘ゴロに凡死して尚ランを作るに至らず(早實零=神二中零)

第五回 早實の平田三振せし後宮川四球に出でゝ二壘を盗み岡田の三壘ゴロを三壘手上村ハンブルして宮川三壘に據り岡田一壘に生くるや三川のバントに宮川本壘に突進して刺されしも岡田は其の隙に乗じて三壘を占めて後續の好打を待つ、臼井遊撃の右を抜く安打に出で出でゝ岡田生還、貴重なる一點を得、尚石崎四球を利して滿壘となりしが霜島更に大飛球を左翼に呈し野手兒島巧みに捉へて二中代り攻む

▲神二中亦好機に際會し箸倉は遊撃ゴロに生き藤原も絶好のバントに生き更に二壘手の逸球を得て三壘と二壘に立ち而も無死なりしが天運尚二中に幸ひせず打順極めて悪く橋本、村田の二者三振に犬死を遂げ田中遊撃飛球に大事去る(早實一點=神二中零)

第六回 早實の石井二壘後に安打して出で中澤の犠牲球と平田の中堅安打に送られて三壘を得宮川のバントを待って生還又一點を加へ平田は尚三壘にありて本壘を狙ひしが岡田ファウルに死し三川遊撃ゴロに斃れて止む
▲神二中の睦好、兒島、今村悉く投手ゴロに死し一壘をも踏む能はず(早實一點=神二中零)

第七回 早實の臼井右翼飛球に死し石崎三振し霜島三壘に死して得點無し
▲神二中の上村遊撃に、箸倉三壘に藤原二壘に何れもゴロを送りて悉く一壘に刺さる(早實零=神二中零)

第八回 早實の石井右翼飛球に、中澤は三振に、平田は二壘ゴロに凡死して得る處無し▲神二中の橋本、村田三振し田中亦投手跳球に死し兩軍依然として二對零の形勢を持續し試合は白熱的緊張を以てラストインニングに入る

第九回 兩軍の打順大に良く互に深く期する處あるものゝ如くなりしが早實の宮川二壘ゴロに死し岡田右翼に飛球を飛し右翼手と中堅手と衝突して双方とも獲ず一壘に生き二壘を盗みしが三川の中堅飛球に併殺されて止む

▲神二中、應援隊必死の聲援に送られて攻撃に立ちしが睦好三壘ゴロに死し兒島は左翼飛球に殪れし後好漢今村三壘に生きて一壘を得しも後續上村投手ゴロに死し關西第一の雄を以て四隣を睥睨せし神戸二中は惜しくも關東健兒の為めに二對零の敗戰を餘儀なくせしめられたり時に午後五時二十分、

〔概評〕兩軍の技倆眞に相伯仲し當に大會中第一流の好ゲームたるを失はず雙方の選手箇々の技倆を比較するに早實の臼井投手は豫て中學チーム不相應の投手とまで稱せられし名投手にして殆ど間然する處無く神戸二中の投手今村亦中等學校中稀に見る好投手にして殊に第二回と四回に猛烈なる敵軍の肉迫を受けながら一點をも與へず巧みに喰ひ止めたる沈着振りは大に賞す可く又早實の輕快無比なる石井遊撃手に對する神戸二中の堅實なる田中遊撃手は實に一對の好コントラストにして是れ亦優劣を見ず唯捕手の技倆に於て早實岡田の強肩が常に二壘を監視し絶えて敵走者の監視を許さゞるに反し神戸二中の睦好が容易に二壘の盗奪を許し惹いて同軍の守備に混亂を生じせしめたると二中軍が第五回目に於て折角のチャンスに遭遇しながら打順不良の為めに空しく此の好機を逸してランを作る能はざりしとは二中敗戰の最大原因なる可く其の他早實の中堅中澤と神戸の左翼藤原とが共にファインプレーを演じて一軍の危機を救ひよくプレーヤーとしての任を完うせしは多とす可し

《武  陽》
◎對早稻田實業野球仕合◎
 八月十八日。大快事、第一回全國野球大會
!!!去んぬる七日我が光榮ある野球部選手は兵庫縣野球大會に優勝して當大會に参加するの榮譽を擔ひたる也。本日の敵は關東に其の雄名を專にせる早稻田實業なり好敵大いに奮戰し以て關西男兒が意氣を發揮せんとす試合は午後三時二十分。都築、小林、折田、町田の四氏審判の元に早實の先攻を以て初まる。

 第一回。敵の第一打者岡田は東都に其の驍名を馳せたるものなり、右翼を抜かんとせしも何ぞ恐れん藤原掌中に巧に収め續く三川苦もなく三振に葬られ臼井二壘手の失に生きしも石崎、今村に弄ばれて止み我が軍代り攻む。

 第一打者田中火を吐く熱球を送りしも投手に得られて一壘に殪れ睦好巧に四球を利して出でしも兒島左翼を衝きて空しく今村の遊撃ゴロに睦好二壘にフォースアウトされ無為。

 第二回。早實の霜島二壘飛球に死せし後石井は四球に中澤は死球に出で平田の犠牲球に送られて二壘と三壘に據り後續の役者宮川多大の期待を持ってボックスに立ちしも投手に直球を呈し今村シングルハンドにて之を収め我が軍攻位につくや上村一壘の壘側を抜く安打に出でしもサインを誤りて二壘に憤死し箸倉は遊撃に藤原は二壘に凡打して止む。

 第三回。早實の打順元に帰り一番岡田再びボックスに現はれしが遊撃に小飛球を呈して死し三川四球を刺して二壘を盗みしも臼井投手グラウンダーに殪れ石崎再び今村の為に三振を喫して無為。我が軍攻めしもなすなく橋本、村田共に二壘ゴロに倒れ田中投手ゴロに死して依然兩軍共得點なし。

 第四回。早實の霜島ゴロにて遊撃を襲ひ一壘手の失に生きしが石井の二壘直球に併殺を喫し中澤又二壘ゴロに死す。睦好遊撃に打ち揚げて殪れ兒島同じ遊撃ゴロを送り遊撃手の暴投により二壘に立ちしが今村の大飛球左翼手の好捕する所となり上村二壘ゴロに凡死して尚ランをなすに至らず。

 第五回。平田三振せし後宮川四球に出でゝ二壘に進み岡田の三壘ゴロを壘手ハンブルして宮川三壘に據り岡田一壘に生くるや三川のバントに宮川本壘に突進して刺されしも岡田は其の隙に三壘を占め後續の好打を待つ、臼井遊撃の右を抜く安打に出でて岡田生還、貴重なる一點を得しむ。

 尚石崎四球を得て滿壘となりしが霜島大飛球を左翼に呈して名をなさしめ我軍代り攻む。箸倉遊撃を衝いて生き藤原も絶好のバントに共に生き更に二壘手の逸球に三壘二壘に走者據りしも天運尚我に幸せず打順悪く橋本、村田枕を並べて本壘に殪れ田中遊撃に飛球を呈して大事去る。

 第六回。早實石井二壘後に安打して出で中澤の犠牲球に二壘に進み平田遊撃手の失に生き石井三壘に據るや宮川のバントを待ちて生還又一點を加へ平田は尚三壘に在りて本壘を狙ひしが岡田ファウルフライを三壘手に得られ三川遊撃ゴロに斃れて止む。我が軍力戰勉めしも及ばず睦好、兒島、今村悉く凡打に終る。

 第七回。早實臼井右翼飛球に死し石崎三度三打を喫し霜島三壘直球に死して得點なし。我上村遊撃猛襲を試しもならず、續く箸倉は三壘強襲を試みて之亦ならず、藤原は二壘手にゴロを得られて未だランなさず。

 第八回。石井右翼に飛球を送りしも徒らに藤原をしてその名をなさしむるのみ、次ぎなる中澤見事に三振に弄せられ平田は二壘ゴロを呈して斃る。我代り攻むれども橋本、村田如何にしけん再び三振に屠られ、田中亦投手ゴロに空しく依然二對零にてラストインニングに入る。

 第九回。一死の後岡田右翼中堅間に大飛球を飛ばせば藤原、橋本雙方より來りて衝突し共に得ず、岡田尚機を見て二壘を盗みしも三川の中堅飛球に併殺されて止む。我が軍最後の攻撃なり、睦好三壘に熱球を送りしもならず兒島フライを左翼手に得られ今村三壘ゴロに生きしも如何せん後援續かず遂に我は惜くも二對零のスコアーを以て敗れたり   
 時に五時三十分暮色一段の哀れみを添ゆ。各選手成績表を左に記さん。

       打安三四補刺得
 〔ニ中軍〕 撃
       數打振球殺殺點
 6 田 中 4000030
 2 睦 好 3001070
 7 兒 島 4000010
 1 今 村 4000910
 5 上 村 4100210
 4 箸 倉 3000420
 9 藤 原 3100030
 8 橋 本 1020110
 3 村 田 1020080
    合計 
272411627

 〔早實軍〕
 2 岡 田 5000141
 4 三 川 3011430
 1 臼 井 4100
1100
 7 石 崎 0031030
 9 霜 島 4000000
 6 石 井 3101231
 8 中 澤 2011000
 3 平 田 30100
14
 5 宮 川 3001200
    合計 
272652027

※記録で朝日新聞と違いがあるので共に掲載。