大正12年(11陽会)1923年

NO5

《武 陽》
【第九回兵庫縣優勝野球大會出場之記】
◎對神港商業戰

 大正12年7月29日(日)寶塚球場 (球審)佐々木氏(壘審)稻田氏。

第一回。二中、甲斐中飛、稻田右飛の後建部右前安打、三輪三壘左抜の安打に出たが尾西三振。
△神港、桝本中飛、高橋右飛、丸泉投手邪飛に凡退。

第二回。二中、東田四球に出で投手の一壘悪投に一擧三進、石場三振の後中野の犠打に生還す。續く榎本一壘越の安打に出で山下の二壘悪投に球の轉々とする間に一擧三進、甲斐の三遊間安打に生還、稻田投匍。
△神港、山下三振の後町田四球に出で三谷の左越二壘打に三進、片山の遊匍に町田生還したが三谷三壘に封殺され久保遊匍。

第三回。二中、建部三振の後三輪四球に出で尾西の一越安打に二進したが東田のインフィールドフライに三盗せんとして刺さる。
△神港、小柴左飛失に二壘に據り桝本三振の後投手の牽制球に二三壘に挟撃されたが三輪の落球に三壘に安全たり、續く高橋四球に出で二盗、丸泉の捕飛後山下の左中間三壘打に二者生還したが町田の三匍に無為。

第四回。二中、石場三振の後中野四球に出で二盗したが榎本三振、甲斐の三匍に無為。
△神港、三谷遊撃手の失に出で片山の三壘安打に二進、久保三振の後三谷三盗、小柴の三匍に生還、續く桝本二飛失に二壘に據り片山生還、桝本投手の牽制球に二三間に挟撃され三壘手の落球に三壘に生きたが高橋三振。

第五回。二中、二死後三輪四球に出たが二盗に倒る。
△神港、三者凡退。

第六回。二中一死後東田四球に出で二盗、石場三振の後三壘に刺さる。
△神港、三谷四球に出たが片山の遊飛に併殺を喫す。久保左直。

第七回。二中、中野三邪飛、榎本中飛、甲斐三邪飛。
△神港、一死後桝本左中間二壘打に出で高橋の三遊間安打に生還、丸泉左飛の後山下中前安打に出たが町田の一邪飛に無為。

第八回。二中、稻田、建部、三輪の四球に出で更に尾西の四球に稻田歸り續く東田の二壘越の安打に三者生還、東田敵失に據り、石場の二匍捕失に生還、石場(代走稻田)その間に二進更に投手の暴投に三進、中野三振、榎本中飛の後甲斐の遊匍一壘失に生還したが稻田一邪飛。
△二中(建部三壘に退き三輪投手に變る)神港二死後久保投手抜の安打、小柴四球に出たが桝本中飛。

第九回。二中、建部四球に出で二盗に倒れし後三輪左中間三壘打に出たが尾西の遊匍に本壘に憤死し東田の中直に無為。
△神港、高橋四球に出で丸泉中堅安打に二進、山下の一匍失に無死滿壘となる、町田二飛の後、三谷の中前安打に高橋生還、續く片山の四球に丸泉出されて同點となる。(此時建部再び投手に三輪三壘に戻る)久保三振、小柴の犠球に片山二壘に封殺さる。

第十回。石場三振、中野三振の後榎本四球に出たが二盗に倒る。
△神港、桝本四球に出で高橋の犠球に二進、丸泉の三壘左抜の安打に三進した時山下の一凡を何事ぞ石場再び後逸する隙に桝本生還し遂に我軍の敗退する所となりぬ。
噫九對八武陽軍亦立たず、光榮ある歴史は再び神港の為蹂躪されぬ。全試合を通し何處に二中スピリットは見出し得しや何處に武陽魂は露はれたるか何の面目あって校友に見えん如何なる辭を以て先輩に謝せん。熱血なきか。熱涙なきか。

 而れども選手のみを責めるは餘りにも酷なり。武陽魂悉く滅びたるに非ず、見よ八回目の猛烈なる總攻撃、武陽魂の發露に非ずして何ぞ、而も我々雪辱の機會は悉く去りたるに非ず、戰士覺醒奮起一番再び光榮ある我二中野球部の眞價を滿天下に知らしめんことのみ希ふ。

▽第二回戰
 神戸二中 020 000 060 0=8
 神港商業 012 200 102 1=9

 (延長10回)

 〔二 中〕 打得安犠盗三四
       數點打打壘振死
 7 甲 斐 5010100
 8 稻 田 4100001
 15 建 部 3110022
 51 三 輪 2120003
 4 尾 西 4110011
 6 東 田 3210102
 3 石 場 5100040
 9 中 野 3000111
 2 榎 本 4110011
    合計 338703911

 〔神 港〕 打得安犠盗三四
       數點打打壘振死
 7 桝 本 5210011
 6 高 橋 2211012
 8 丸 泉 6120000
 9 山 下 6020110
 19 町 田 4100001
 5 三 谷 4120101
 3 片 山 4110110
 4 久 保 5010020
 2 小 柴 4100001
    合計 409101366

〈朝日新聞〉
【第9回全國野球選手権大會兵庫豫選】

 大正12年7月29日(日)寶塚球場 午前8時開始 11時30分閉戰
 (審判)球審・佐々木 壘審・稻田

▽2回戰
 神戸二中 020 000 060 0=8
 神港商業 012 200 102 1=9

 (延長10回)

 〔神港商〕       〔神二中〕
 左 桝 本       左 甲 斐
 遊 高 橋       中 稻 田
 中 丸 泉       投 建 部
 中投山 下       三 三 輪
 投右町 田       二 尾 西
 三 三 谷       遊 東 田
 一 片 山       一 石 場
 二 久 保       右 中 野
 捕 小 柴       捕 榎 本

 失四三安打       失四三安打
 策死振打數       策死振打數
 4761040       61010734

▲二壘打=三谷(神港)桝本(同)▲三壘打=三輪(二中)山下(神港)

第一回。二中=二者凡退の後建部、三輪安打を放ったが尾西三振に止む。
▲神港=三者凡退。(兩軍零)

第二回。二中=東田四球を選んで出るや牽制暴投に一擧三壘を奪ひ一死後中野の絶好のバントに送られて幸先よき一點を先取、榎本二越安打に一擧二盗を企て右翼の暴投に又も二壘に達して甲斐の遊匍安打に堂々點を加へて計二點を占む。
▲神港=一死後町田四球を三谷の二壘打に送られ片山の遊匍に一點を報ゆ。(二中二、神港一)

第三回。神港=町田投手山下と換ふ。二中=建部三振後三輪三振、尾西一越の絶好の安打に再び好機を見たが東田の内野飛球に三輪と共に併殺。
▲神港=小柴右飛失に生き桝本三振、高橋四球、丸泉邪飛に斃れて二死の時山下中越飛球を戞飛して三壘打となり小柴、高橋生還、二點を加え勝ち越す。(二中零、神港二)

第四回。二中=無為。
▲神港=三谷遊匍失に出で片山の三越安打に送られ一死後小柴の三匍に三谷歸り桝本の右飛失に片山も歸り、高橋三振又二點を加ふ。(二中零、神港二)

第五回。兩軍無為。
第六回。兩軍無為。

第七回。二中=敵方の守備固くて入らず。
▲神港=打撃大いに振ひ安打續出一死後桝本中右間に二壘打して高橋の遊匍に送られ丸泉の左飛の後を受け山下中前に安打を放って又も一點を加ふ。(二中零、神港一)

第八回。二中=稻田、建部、三輪の三者四球に出で無死滿壘、二中軍この機に大勢を挽回せんとして尾西立つ、尾西又も四球を得て稻田押し出されて一點を加へ、東田絶好の二越安打に建部生還。右翼よりの球を捕逸し續いて二者生還に應援團熱狂して總立ちとなる。山下投手町田と代る。神港軍の守備全く亂れ石場二匍を野手本壘に暴投して東田歸り二壘へ牽制暴投に石場歸り漸く稻田一飛に終る。此回に六點を入れて得點天地を換ふ。
▲神港=久保の安打があったが無為。(二中六、神港零)

第九回。二中=神港軍の意氣の亂れたに乗じて二中尚も攻撃鋭く突いたが神港の守備固く一死後三輪左中間に三壘打を戞飛し尾西遊匍に野手本壘に好投し三輪を憤死せしめ東田又中堅の美投に終る。
▲神港=決死の勇を振って最後の攻撃に立つ。戰は白熱化し高橋四球、丸泉二壘に安打して走者一二壘に據る時強打者山下立ち一壘を猛襲して失じらせ無死滿壘、町田の凡打の後三谷左前安打に高橋歸り片山の四球に丸泉押し出されて兩軍同點となり愈よ補回ゲームに入る。試合は益々灼熱す。(二中零、神港二)

第十回。二中=三者無為。
▲神港=打者順よく一番打者桝本四球に出で高橋の犠打に送られ丸泉三越安打に桝本三壘を踏み山下又も一壘を猛襲して失じらせ桝本歸って大接戰後遂に神港勝つ。閉戰十一時三十分。


12陽会(大正13年卒)
 稲田摂次郎    二塁
 建部 俊一    捕手