大正12年(11陽会)1923年

NO1

《武 陽》
[第二回京神中等學校對抗野球大會]

◎神戸側豫選大會優勝之記
 第二回京神中等學校對抗野球大會は神戸新聞社主催の下に四月廿七日より山下グラウンドに於て開かれたり出場せしは神戸商業、關西學院中學、神戸一中、神港商業、瀧川中學、育英商業、姫路中學、甲陽中學、御影師範及び本校の十校なりき。
大正12年5月6日(日)山下グラウンド

▼第一回戰
 先づ瀧中軍を蹴破す。敵は弱輩なれど去年辛き經驗を嘗め我等は大いに引締め之を大手球場に會しぬ。午後零時四十分、佐々木、藤尾兩氏審判の下に我軍先攻にて戰端を開く。

第一回 我軍稻田劈頭死球、尾西の二越安打に、三壘に到る。尾西二盗の後甲斐遊三間適時安打に二者生還す。建部四球に出で捕逸に二進、走者三二の壘に據った。甲斐のスクイズせんとして本壘に刺され、建部三壘に殺到するや焦れる松井、三壘に暴投し建部長驅生還。
▽瀧中、別所左邪飛、松井三振、岡本三匍に無為。(神二中三、瀧中○)

第二回 中野三振の後石場四球に出でたが、三輪の遊飛球に併殺さる。
▽瀧中、柏原中飛、島本三振、中島一邪飛に凡退。(兩軍○)

第三回 (瀧中中島退き天野三壘に變る)
 稻田遊匍失と遊撃の一壘悪投とに一擧二壘に進み更に尾西の三匍に三進、甲斐の投匍に稻田本壘を突かんとして刺され、建部の三壘左を抜く安打に尾西生還、建部捕逸二個に滿壘となり有望なりしが、投飛に惜しくも三名スタンディング。
▽瀧中、後藤、田代共に三振、久保遊匍。(二中二、瀧中○)

第四回 (瀧中、後藤退き久保左翼、今井投手に變る)
 三輪死球、稻田、尾西四球に出で、無死滿壘の好機を作る、甲斐の二匍に尾西二壘に封殺されたが、三輪生還、稻田三進、甲斐二盗の後建部の遊匍に稻田生還したが東田の一匍に止む。
▽瀧中、別所二飛の後松井三匍一壘失に初めて出壘、岡本の左前安打に二進したが續く柏原、岡本共に三振。(二中二、瀧中○)

第五回 榎本、遊匍失と一壘悪投に一擧二壘を占め中野の二匍一壘手の失に生還、中野二壘に至る、石場の三振後三輪の左中間柵越の大本壘打に二者生還、稻田、尾西共に遊匍。我軍得點十を算す。
▽瀧中、天野死球に出で今井三振、田代投匍の後久保の二越飛球、中野(二中)スタートを誤り安打となり、中島生還、最初の一點を得、續いて別所四球、松井死球に出でしも岡本三匍、三輪(二中)よく止む。(二中三、瀧中一)

第六回 二中甲斐中前安打に出たが建部の中堅右の大飛球に、アワヤ本壘打と思ひしに、田代必死の後退にシングルにて掴み、返す刀で甲斐を一壘に併殺す、敵ながら美技なり。東田四球に出で二盗せんとして刺さる。
▽瀧中、柏原投直、島本、中島共に三振。(兩軍○)

第七回 榎本三振後、中野四球に出で二盗捕逸に三進したが、石場三振、三輪の二匍に無為。
▽瀧中、今井二匍の後田代内野安打に出で二盗、久保三振、別所四球の後松井の遊匍失に三進滿壘となりしも、岡本の三匍(三輪一寸ハンブルせしも強肩よく一壘に刺すを得て危機を脱す)コールドゲームは宣せられぬ。時に二時五十五分、十對一我軍勝。

▽1回戰
 神戸二中 302 230 0=10
 滝川中學 000 010 0=1

 (7回コールドゲーム)

  〔二中〕    〔瀧中〕
 8 稻 田    6 別 所
 4 尾 西    2 松 井
 7 甲 斐    4 岡 本
 1 建 部    3 柏 原
 6 東 田    7 島 本
 2 榎 本    5 中 島
 9 中 野    5 天 野
 3 石 場    9 後 藤
 5 三 輪    9 久 保
          8 田 代
          1 久 保
          1 今 井


 打得安三四盗失  打得安三四盗失
 數點打振死壘策  數點打振死壘策
 25106      251210417

〈神戸新聞〉
[第2回京神中等學校對抗野球戰]

大正12年5月6日(日)神戸・大手山下グラウンド 午後0時40分=3時40分
審判・佐々木(球)藤尾(壘)
▽1回戰
 神戸二中 302 230 0=10
 瀧川中學 000 010 0=1

 (7回コールドゲーム)

 〔神戸二中〕       〔瀧川中學〕
 8 稻 田        6 別 所
 4 尾 西        2 松 井
 7 甲 斐        4 岡 本
 1 建 部        3 柏 原
 6 東 田        7 島 本
 2 榎 本        5 中島・天野
 9 中 野        9 後藤・久保
 3 石 場        8 田 代
 5 三 輪        1 久 保

 打得安犠三四盗失     打得安犠三四盗失
 數點打打振死壘策     數點打打振死壘策
 26106061032     2613010416

△本壘打=三輪△併殺=(別所、柏原)(田代、別所、柏原)△暴投=今井1△捕逸=松井3△残壘=二中4、瀧中8
△試合時間=2時間

☆神二中強襲して勝つ 十對一のコールドゲーム 悪戰苦闘した瀧中軍☆

第一回。二中稻田四球、尾西二越安打に出で甲斐の遊三間安打に兩者生還。建部四球の後甲斐スクイズせんとして本壘に刺さる。本田、榎本共に三振。
△瀧中無為。(二中三、瀧中零)

第二回。二中一死後石場四球に出たが三輪の遊飛に併殺さる。
△瀧中三者凡退。(兩軍零)

第三回。(瀧中今井一壘、久保右翼、天野三壘に變る)二中稻田遊捕失と遊撃の一壘悪投にて一擧三壘に據り尾西三匍の時本盗せんとして刺されたが建部の三越安打に尾西生還、其後榎本の中前安打に建部又生還し二點を得。
△瀧中凡退。(二中二、瀧中零)

第四回。二中今井投手の肩慣れざるに乗じ三者四球に出で無死滿壘の好機を作り甲斐、建部の遊匍に三輪、稻田生還。
△瀧中一死後松井遊匍失、岡本左前安打に出たが柏原、島本三振して無為。(二中二、瀧中零)

第五回。二中榎本遊撃を過まらし一壘悪投に一擧二壘を占め中野の二匍失に生還。石場三振の後三輪戞然左中間に本壘打を戞飛ばし中野と共に悠々生還したが稻田、尾西遊匍。
△瀧中天野死球に出で久保三振、田代投匍の後今井の中前安打に一擧生還、最初の一點を獲得し別所、松井の四死球に滿壘となったが岡本の三匍に止む。(二中三、瀧中一)

第六回。二中甲斐遊三間を抜く安打に出たが建部の飛球を中堅後退して好く捕へ再び一壘に好投したる為め併殺を喫す、東田四球に出で二盗せんとして刺さる。
△瀧中三者凡退。(兩軍零)

第七回。二中中野一死後四球を利して出で盗壘と捕逸に三壘に據ったが後援鳴く止む。
△瀧中一死後田代内野安打に出で今井三振後別所四球、松井遊匍に滿壘の好機を作り點をなすと見えたが岡本の遊匍に萬事休し十對一のコールドゲームにて神二中軍の勝利に歸す。時に三時四十分。

《武 陽》
▽第二回戰
大正12年5月11日(金)山下グラウンド
◎對關西學院戰
 二對一我軍勝てり。
 午後三時五十五分稻垣、河合兩氏審判の下に我軍先攻にて開始さる。

第一回 二中、甲斐、稻田共に二匍、東田の投匍に輕く退く。
△關西、西川左飛の後岡田三匍一壘悪投に出たが今北の遊匍に見事併殺痛快なり。(兩軍○)

第二回 二中、建部三振、尾西投匍の後榎本の一撃、見よ球は見事中堅をオーバーして本壘打となり轉々として代走甲斐一擧生還、貴重なる一點を先取す、中野三振。
△關西、井田二匍の後細川遊觸安打に出で榎本の強肩を潜って二盗、小林の投匍に三進花房の左翼安打に生還同點となる、堀川一飛。(二中一、關西一)

第三回 二中、石場、三輪共に三振、甲斐二匍。
△關西、中村死球に出で西川の犠打に二進したが、岡田、今北の兩者三振して無為。(兩軍○)

第四回 二中、稻田一直、東田遊匍、建部投匍。
△關西、井田、細川二者三振、小林遊飛。(兩軍○)

第五回 二中、尾西右飛の後榎本(代走甲斐)右前に絶好の直球を打ったが岡田の好投に刺さる。中野三振。
△關西、花房三振後堀川の投匍を石場失し堀川二進したが、中村三振、西川の一匍に無為。(兩軍○)

第六回 二中、石場二壘横の内野安打に出でたるも三輪の進匍に封殺さる、甲斐の一匍に三輪二進、稻田の右前安打に又三進したが東田の一匍に好機を逸す。
△關西、岡田遊匍、今北二匍失に出で、井田の左飛後二盗せんとして榎本の好投に刺さる。(兩軍○)

第七回 二中、建部三振、尾西投匍の後榎本一壘右を抜く二壘打に出たが中野の二匍に又も好機を逸す。
△關西、細川遊飛、小林左飛、甲斐スタートを誤り安打となって出たが花房の三振後二盗せんとす、何條榎本の許すべき見事尾西とこれを刺す。(兩軍○)

第八回 二中、石場、中野共に一飛後甲斐二遊間安打に出で二盗したが稻田三振。△關西、堀川遊飛失に出で中村の投匍投手の二壘に投じたるも及ばず一瞬の差にて野選に生き、西川の犠打に一死走者三、二壘に據るピンチ、ピンチされど我バッテリー少しも動ぜず悠々と大きなカットドロップを投ずれば焦れる岡田のバント空に流れ堀川を三、本間に憤死せしむ痛快なり岡田遊飛。(兩軍○)

第九回 遂に最終回は来たが依然同點である。觀衆は兩軍の善闘に全く醉ふ、二中東田必死となって投手をつけば一壘手のジャンプした隙に東田輕妙なるスライディングを以て一壘に安全たり、續く建部左翼右を抜く猛二壘打を放ち左翼手止め得ずハンブルした隙に東田一擧本壘を陥れ決勝の一點を得建部尚三壘にあり尾西三振し榎本の投匍に建部本壘を強襲して惜しくも寸前に刺され榎本又二盗せんとして刺さる。されど一點をリードし結果勇躍守備につく。

△關西、差は僅々一點なり、主将今北必死の形相物凄く如何にもして一點を回復せんと大飛球を喝飛ばし遠く左翼の頭上をかすめたが甲斐後退又後退之を觀覧席直前に取り危機を救ふ。觀衆其美技に醉ひ今北の顔色素白となり戰況寧ろ悲惨なり。井田中前安打に出たが細川の投匍を無謀にも一擧三壘に到らんとして石場の好投三輪の好捕に最後の十度目を刺す。五時半閉戰二對一。二中軍勝矣、こゝに見事去年の復讐を遂げぬ。おゝ光榮ある勝利よ、噫偉大なる二中精神の發露よ。

 〔關 西 〕打得安犠盗三四失残
       數點打打壘振球策壘
 2 西 川 200200000
 9 岡 田 400001000
 1 今 北 400001000
 3 井 田 401001010
 8 細 川 411011000
 5 小 林 300000000
 4 花 房 301002000
 6 堀 川 300010001
 7 中 村 300001112
    合計 3013227123

 〔二 中〕 打得安犠盗三四失残
       數點打打壘振球策壘
 7 甲 斐 401010011
 8 稻 田 401011001
 6 東 田 410000010
 1 建 部 401002000
 4 尾 西 400001010
 2 榎 本 412000001
 9 中 野 300002000
 3 石 場 301001010
 5 三 輪 300001011
    合計 3326028054

〈神戸新聞〉
大正12年5月11日(金)神戸・大手山下グラウンド
午後3時30分=5時30分 審判・稻垣(球審)河井(壘審)

▽2回戰
(敵失)000 000 002=2
(安打)010 002 111=6
神戸二中010 000 001=2
 關學中010 000 000=1

(安打)010 000 101=3
(敵失)110 011 010=5

〔神戸二中〕 打得安犠盗三四刺補失残
       數點打打壘振球殺殺策壘
 7 甲 斐 40101003001
 8 稻 田 40100100001
 6 東 田 41000006220
 1 建 部 40100201610
 4 尾 西 40000101210
 2 榎 本 41200007401
 9 中 野 30000200000
 3 石 場 30100109200
 5 三 輪 30000100211
    計  33260180271854

〔關西學院〕 打得安犠盗三四刺補失残
       數點打打壘振球殺殺策壘
 2 西 川 20020009100
 9 岡 田 40000101100
 1 今 北 40000100500
 3 井 田 401001015210
 8 細 川 41001100000
 5 小 林 30100000000
 4 花 房 30100201400
 6 堀 川 30001001201
 7 中 村 30000110012
    計  30132271271523

 △本壘打=榎本 △二壘打=建部、榎本 △併殺=(東田、尾西、石場)
 △試合時間=2時間