大正11年(10陽会)1922年

NO3

《武 陽》
〔京神野球大會〕大正11年5月6日(土)

◎第二回戰 對神戸商業
 五月六日午後四時我軍の先攻に開始。

 第一回=我軍稻田美事なるホームスティールに一點を奪へば▲敵も網干の三遊間二壘打は西垣、濱崎に送られて生還す。

 第二、三、四、五回兩軍無為。此の間敵投手の怪腕辛辣を極め二個のPゴロを除きては他は皆三振なり。

 第六回=吾軍又も無為▲神商江見の安打、足立のバント一二壘による。網干三振後西垣四球に滿壘となれば濱崎一壘方面に打ち二者生還、今中四球、中野三振、森本四球に西垣を押し出して尚滿壘なり。山田左中間に快打すれば左翼村尾よく捕へて危機を救ふ。

 第七回=建部四球にを出でしのみ▲敵軍足立の左翼三壘打は網干送られて生還、又一點を加ふ。

 第八回=我又も無為。敵中野我が失策に生還す。

 第九回=ラストインニングなり。我奮闘の甲斐もなく宇麼谷を四球に送りしのみにて止む。
 六A對一。然も如何とも詮術なし。

 神戸二中 100 000 000=1
 神戸商業 100 003 11A=6


  〔本校〕   〔神商〕
 8 稻 田  2 網 干
 2 宇麼谷  7 西 垣
 1 建 部  1 濱 崎
 5 榎 本  3 今 中
 6 松 尾  8 中 野
 3 石 場  4 森 本
 4 尾 西  5 山 田
 9 中 野  9 江 見
 7 村 尾  6 足 立

〈神戸新聞〉
[第一回京神中等學校對抗野球戰]大正11年5月4日(木)
神戸・大手山下グラウンド 午後3時30分=5時40分 審判・佐々木(球)中村(壘)

 神戸二中100 000 000=1
 縣立商業100 003 11X=6


 〔神戸二中〕     〔縣立商業〕
 8 稻 田      2 網 干
 2 宇麼谷      7 西 垣
 1 建 部      1 濱 崎
 5 榎 本      3 今 中
 6 松 尾      8 中 野
 3 石 場      4 森 本
 4 尾 西      5 山 田
 6 中 野      9 江 見
 7 村 尾      6 足 立

 打得安犠盗三四刺補失   打得安犠盗三四刺補失
 數點打打壘振球殺殺策   數點打打壘振球殺殺策
 27100319424154   296404452770

 ▲三壘打=足立 ▲二壘打=網干 ▲捕逸=宇麼谷 ▲ボーク=建部
 ▲残壘=縣商4、二中2 ▲併殺=(中野、山田)

☆黒装の縣商、白鉢巻の二中 白兵して緑野に相奮闘す☆
 白日燦として戰士決死の面を照し
 應援の怒號砂塵を捲いて湧いて起る

第一回=二中稻田先づ四球を利して出で美事に二盗、宇麼谷バントを戞上げて退き建部の二匍に稻田三壘に據ったが更に機を見て美事本壘を奪ひ貴重なる最初の一點を占め意氣頗る昂る、榎本四球に出たが松尾の右飛に残壘となる。
▲縣商=網干劈頭戞然三壘を抜く二壘打に出で西垣の遊匍に三壘を占め續く濱崎の遊匍に網干長驅生還。之亦一點を収め同點となり、今中遊匍に死したが二中、縣商兩軍の應援團熱狂して第一回より戰況既に白熱する。(二中一、縣商一)

第二回=二中石場、尾西、中野共に三振、縣商濱崎投手の怪腕漸く冴えを見せ來る。
▲縣商=中野三匍失に生き直ちに二盗したが森本三匍、次いで山田の遊匍に山田、中野併殺を喫して止む。(兩軍零)

第三回=二中村尾、福田、宇麼谷の三者投手濱崎の魔球に飜弄されて何れも枕を並べて三振。
▲縣商=江見右飛、足立三振、網干遊飛に凡退。(兩軍零)

第四回=二中建部投匍、榎本三振、續く松尾ノーボールで三振を喫して止む。
▲縣商=西垣遊匍の後濱崎四球を利して出で機を窺って二盗し、今中の三振捕逸に三壘に進み好機を得たが離壘して本三間に挟殺され切歯して退く。(兩軍零)

第五回=二中石場ワンボールで三振、尾西投匍、中野ノーボール三振を喫す。
▲縣商=中野、森本共に一匍に退き山田又遊匍して凡退す。(兩軍零)

第六回=二中村尾、稻田、宇麼谷三者三振、縣商の守備鐵壁の如く堅い。
▲縣商=江見右前安打に出で足立投匍野選に兩者共に生き續く網干空しく三振したが西垣四球を受けて滿壘の好機を作る。續く濱崎は縣商の首将である俄然濱崎の一匍、壘手の失策に江見、足立共に生還、一擧に二點を奪取する。その間に濱崎二壘に西垣三壘に據る。續く今中又も四球を選んで再度滿壘の好機を作る。中野三振の後森本の四球に押出されて西垣生還。更に一點を加へたが山田の左飛を二中村尾好捕して危機を脱したが二中軍稍困惑状態に陥る。(二中零、縣商三)

第七回=二中建部四球を利して出で榎本、松尾、石場三者三振。縣商の壓迫益々急を加ふ。
▲縣商=江見二匍に死したが續く足立左翼三壘打を戞飛し網干の遊匍失に躍然生還、網干二盗したが西垣遊直に殪れ濱崎の二匍に網干壘を残して退く。(二中零、縣商一)

第八回=二中軍形勢不利と見て戰士決着して起ったが尾西二匍、中野三振、村尾投匍、何れも縣商濱崎の怪腕に封じられて無為。
▲縣商=今中三振、中野遊匍に生き二盗、村尾の投匍に中野進壘、更に投手ボークに依って生還。山田四球に出で二盗せんとして捕手好投に刺さる。(二中零、縣商一)

第九回=ラストインニングである。二中決死の覺悟で稻田ボックスに起ったが敢なく三振を喫し宇麼谷死球に出で二盗し投手の逸球に更に三盗し機を窺ったが建部三振、榎本の遊匍に空しく涙を呑み結局一對六Aで縣商軍の勝利に帰した。時に五時四十分。