《武 陽》
[西日本中等學校選抜野球大會出場之記]
豫選に仇敵一中に敗れてより各自静養にありしが藝備新聞主催首相盃争奪戰の招待を受く。
帰省中の者も集まり新規蒔直しで練習する、江川部長引率甲斐先輩をコーチとして下廣する日二十三日正午なり、二十三日眞夜中宿に至り寝につく、二十四日廣島高師にて練習し第一日を迎ふ。
◎對三次中學校 昭和4年8月25日(日)
首相盃を狙ひ西日本の九代表と雌雄を決する時は來た。この日空しく晴れ烈日グラウンドの緑の草原に照り榮えて絶好の大會日和、南の方……望み見る宇品湾よりさっと吹く海風心持よく選手達の面をなでて行った。
一回戰は不戰一勝に二回戰は北備の雄三次中學と對戰せり。山下球審、山崎、上原壘審の下に三次先攻、開始さる。
第一回。(三次)岩本中飛、中野二失に出でしも二百田左飛後捕手好投に倒る。
(二中)牧野四球に出で石原又四球で送られ別所、丸山の投前犠打バントに牧野先づ帰る。前田捕手邪飛に止む。
第二回。(三次)野村四球に出で影山三前バントに送り千葉三壘左方を抜く安打し後二盗したが石見一壘邪飛、撰遊飛に終る。
(二中)志摩四球に出で津久井の投前バントに二壘に死し中山三失に生きしも甲斐三振、牧野二匍に入らず。
第三回。(三次)河本中前安打に出で續く岩本、中野、二百田左翼安打し津久井、甲斐に代る。野村中飛
、影山の中飛犠打に中野還り三點を占む。千葉三振。
(二中)石原四球、別所死球、丸山左前安打し前田見逃して三振、志摩四球に石原還り津久井の四球に別所還り中山右前安打を放ち丸山還る。志摩三壘、本壘間に封殺され甲斐遊匍、牧野遊飛に止む。
第四回。(三次)石見左飛、撰二匍、河本三振に凡退。
(二中)石原遊飛、丸山第一球を振れば左越三壘打となり前田中前安打し生還。志摩捕手邪飛に終る。
第五回。(三次)岩本遊飛、中野中飛、二百田遊失に生きしも野村の中前安打に送られしが野村の遊撃ライナーに入らず。
(二中)津久井第一球を狙ひ右中越二壘打し中山の右翼安打に送らる、投手河本三壘に、捕手岩本投手に、三壘中野捕手となる、甲斐遊匍し野手選擇となり津久井、中山長驅す、甲斐二壘に倒れ牧野三匍、石原四球に出でしが二走し倒る。
第六回。(三次)千葉三振、石見左中間二壘打しも撰の中飛、河本遊撃頭上を抜くかと見えしに中野好捕す。
(二中)別所○−一後猛打すれば右中越三壘打となり丸山四球後に二盗し前田中前安打に別所先づ帰り丸山長驅して還る、前田捕手逸球に三盗し一擧本壘に走り生く、志摩四球後二走し倒れ津久井遊匍、中山左飛に終る。
第七回。(三次)岩本四球後捕手好投に刺され中野左翼二壘打し二百田の二匍暴投に得點、野村右飛、影山投匍に終る。アルファー附コールドゲームなり。
三次中學 003 000 1=4
神戸二中 104 123 A=11
(7回コールドゲーム)
〔三 次〕 打得安犠盗三四残失
死
數點打打壘振球壘策
21 岩 本 311010101
52 中 野 422010001
6 二百田 401010030
3 野 村 301000120
4 影 山 200200000
7 千 葉 301012010
8 石 見 301000010
9 撰 300000000
15 河 本 311001000
計 2848243272
〔二 中〕 打得安犠盗三四残失
死
數點打打壘振球壘策
6 牧 野 310000101
7 石 原 110000310
2 別 所 221100100
5 丸 山 232110100
73 前 田 412031000
8 志 摩 110000300
31 津久井 311000110
4 中 山 412010022
139 甲 斐 300001010
計 231182521053
◎對大正中學戰 昭和4年8月27日(火)
今春廣商を敗り底力あるチーム大正と組んだ、連日の晴天、グラウンドコンディションは言分なく山下氏球審の下に開始、三時過ぐる三分!
第一回。(大正)井上右翼安打し長町の捕前バントに送られ西山遊匍、田村の左翼左方二壘打に井上生還、宇根左翼左方を再び抜き田村還る。永田の二匍失に宇根本壘を踏み廣田左中安打せしも中川の遊匍に死す。
(二中)牧野投飛、石原中前安打に別所の三匍失、丸山の遊匍に進みしも其の間別所二壘に死し前田の遊飛に入らず。
第二回。(大正)小松二匍、井上死球に出でしも長町の遊匍に二壘に倒る。
(二中)志摩三振、津久井四球に出で二盗し中山三振、甲斐の遊匍失に送られしも牧野二匍に斃る。
第三回。(大正)西上三匍、田村三匍失後捕手二壘暴投に二走し一擧三壘を狙ひしが中堅手好投に死す、宇根三振。
(二中)石原三壘邪飛、別所右飛、丸山三匍に凡死す。
第四回。(大正)永田左中間二壘打し廣田二飛、中川四球、小松左中間二壘打し井上中飛犠打に中川還りしが小松投手牽制に二壘に倒る。
(二中)前田三前バント失に生き後二盗し志摩四球、津久井左前安打し前田還り中山の二匍に志摩還り、甲斐三匍に出でしが津久井本匍に封殺、牧野死球、石原遊匍に終る。
第五回。(大正)前田右翼に退き津久井プレートに立つ、長町一匍、西上遊匍、田村遊匍一壘暴投に生き後二盗し宇根遊匍失に田村還り、永田四球、廣田二壘ライナーに止む。
(二中)別所捕手邪飛、丸山中前安打、前田中飛、志摩二匍に退く。
第六回。(大正)中川四球後二盗し小松の遊匍に送られ一擧本壘をついて斃る。井上四球、長町一匍す。
(二中)津久井四球、中山の一匍に倒れ甲斐投匍し中山投手牽制に倒る。
第七回。(大正)西上遊撃安打後二盗し田村左前安打に宇根左中間二壘打し西上、田村還る。永田三振、廣田三匍暴投後宇根と重走し中川左飛、小松三振に止む。
(二中)牧野中飛、石原投匍、別所バット折れ投匍となる。
第八回。(大正)井上投匍、長町遊匍、西上四球後二盗せしも田村投匍。
(二中)丸山遊匍、前田遊匍失に出で二盗し志摩中前安打に前田還る。津久井三匍、林、中山に代りしも三振に止む。
第九回。(大正)宇根左飛、永田三匍一壘手のハンブルに生き廣田竝にピンチ、富岡四球、永田我軍の計畫に乗り封、小松三振に入らず。
(二中)最後の攻撃、甲斐三遊匍安打し牧野の遊匍に倒れ牧野二盗せしも石原中飛、別所遊匍に全く終る。
大正中學 300 210 200=8
神戸二中 000 200 010=3
〔大 正〕 打得安犠盗三四残失
死
數點打打壘振球壘策
5 井 上 211100211
8 長 町 400100000
4 西 上 411020111
2 田 村 532010000
1 宇 根 512010120
3 永 田 311001120
7 廣 田 401010130
9 中 川 210010200
PH 富 岡 000000110
6 小 松 501002002
計 34892639104
〔二 中〕 打得安犠盗三四残失
死
數點打打壘振球壘策
6 牧 野 400010121
7 石 原 501000010
2 別 所 500000000
5 丸 山 401001021
913 前 田 420020000
8 志 摩 311001110
31 津久井 201010210
4 中 山 300001001
4 林 100001000
19 甲 斐 401010020
計 3535054493
《武 陽》
[神戸新聞社主催野球大會出場之記]
我々は新人の練習を重ねて居ました所福山誠之館と此の神戸新聞社より招待を得再び新人を主體とせるチームの練習をスタート。原、金政兩氏コーチに始む。
◎對生野中學校戦 昭和4年9月22日(日)濱の宮球場
神戸二中 000 002 020 01=5
生野中學 000 001 012 00=4
(延長11回)
夜來の雨名残りなく空は一點の曇りなく霽れはたり空は一點の曇りなく青空にかげらうの亂舞する日本晴!十一時入會式あり、君ケ代の齊唱!この崇嚴、この盛観、若き熱、若き力は凝集して西北隅橋頭高くひるがえる日章旗にこだまするや感激と緊張に浸されて行った。
〈神戸新聞〉
[神戸新聞社主催第5回全國選抜中等學校野球大會]
昭和4年9月22日(日)濱の宮球場 審判・橋本(球)小柴、三輪(武)(壘)
(失策) 000 102 010 00=4
(四球) 101 101 000 00=4
(安打) 100 002 231 02=11
神戸二中 000 002 020 01=5
生野中學 000 001 012 00=4
(安打) 000 111 001 11=6
(四球) 000 000 123 00=6
(失策) 000 001 010 00=2
〔神二中〕 打得安犠盗三四刺補失残
數點打打壘振死殺殺策壘
6 牧 野 61402003402
1319津久井 51000110111
2 別 所 31210018201
5 丸 山 51200004301
414 前 田 40100013111
91 甲 斐 50000100000
8 志 摩 51201004001
343 高 野 40000219002
7 野 田 30000302000
PH 林 20000100000
合 計 425111384331129
〔生野中〕 打得安犠盗三四刺補失残
數點打打壘振死殺殺策壘
4 原 田 41100123210
8 石 橋 30010112001
1 永 田 50000000612
2 山 田 30101019011
3 高 塚 50100109201
6 越 田 50000106100
7 清 水 51100001100
9 岩 橋 41000112000
5 松 尾 41200011111
合 計 38461156331346
△試合時間=二時間卅五分
△三壘打=別所、丸山
△二壘打=牧野、松尾
△逸球=別所(2)山田
△併殺=清水−越田、津久井−別所−丸山
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