昭和4年(17陽会)1929年

NO1

《武 陽》
 やがて功なり業卒へて榮えはる我校我部を出でんとする好守沈着よく一軍を統べし丸山三壘手、加ふるに強肩快打の熱血兒別所捕手更に沈黙模範たる石原左翼手竝に中山二壘手を送る事となりした。
今春池田主将以下大橋投手、田中一壘、山本中堅、太田左翼の諸手を送り新しい希望と貴き部史の為め血と汗の奮闘の記を今又展開し見校友諸君の回顧の資となさん。

[高松遠征之記]
 我部は明石の大會を目前に高松中學より招聘を受けたり、敵に廻して實力我れに勝れりとの風評も何かあらん好敵手なれ、二中精神に何か劣らんこの事を確く信じ馬場先生に引率され四國に渡れり。
 花も彌生の二十五日惜春の櫻雨に散り明くれば赤日赫々として東天より上り高松市立球場は滿員を呈せり。

第一回。(神二中)牧野四球、石原二飛、牧野一壘に刺され併殺を喫せらる。志摩四球、別所の左飛球に終る、中村投手の虚つく能はず。
(高松中)岡見の中前飛球、光宗の二壘匍、中村の遊撃匍、三者凡退す、甲斐投手良し。

第二回。(神二中)丸山三壘匍、前田遊匍、續く山田一−一の左翼右に二壘打せしが甲斐の投匍に止む。
(高松中)田淵四球、中村の捕前バントに送られ佐藤の三壘手上を抜く安打に一擧本壘を窺ひ志摩の好投に刺され機逸す、安達中堅右方に飛球せしも中山の好捕に止む。

第三回。(神二中)中山二−○後三ストライクを見送り三振、牧野の二匍、石原の遊撃飛球に刺さる。
(高松中)久本二匍後山本三壘上を抜き安打し岡見左翼フライ、光宗の四球に送られ中村の一壘邪飛に止む。

第四回。(神二中)志摩四球後別所三振、再び丸山四球に送られ前田の投手邪飛球、山田の三振に止む。
(高松中)田淵三壘飛球、中村の投手邪飛球、佐藤の左翼フライに終る。

第五回。(神二中)甲斐中堅ライナーを飛せしが中堅手好捕し中山の三匍暴投に生き牧野の中堅左方安打に三壘に入る時投手三壘へ暴投し牧野三壘に據り石原の三匍に得點し有勢なりしが志摩の投手飛球に止む。
(高松中)安達四球に出で二壘を窺ひ捕投に刺さる、久本一壘匍、山本よく選球後三振に止む。

第六回。(神二中)別所四球に送られ丸山の犠牲打投手の一壘暴投に一擧生還、丸山三壘に止る、前田中前飛球、山田三振、此處に中村正と田淵の投手交代あり、甲斐三飛に終る。
(高松中)岡見中左安打、光宗走者を送らんとバントを試む、一壘前に至り成功せず、中村遊飛、遊撃二壘へ投じて併殺す。

第七回。(神二中)中山四球、牧野投手前内野安打し中山とダブルスティールに成功す、石原三振、志摩同じく別所の三匍に終る。
(高松中)田淵四球、中村投飛、佐藤二匍、中村二壘盗壘しも安達の左前飛球に終る。

第八回。(神二中)丸山二−三後三振、續く前田見逃して三振、山田再び中前二壘打せしも甲斐の三振に止む。
(高松中)久本二壘左方安打し續く山本二匍、岡見死球、光宗一壘左方安打に久本一擧生還、續く中村又も中前二壘打に岡見、光宗生還、田淵二飛後中村左前安打し中村三壘に至り再び危機となりしが佐藤の左前飛球に逸す。

第九回。(神二中)中山投手前内野安打し牧野、石原の二壘、捕手の犠牲バントに三壘に至り好機至りしも志摩の三振痛し。
(高松中)安達四球、久本の遊匍の後安達二壘を窺ひ捕手の好投に刺され山本又二壘左方安打後二壘を窺ひ挟殺さる。

第十回。(神二中)遂に補回戰に入る、別所中前安打、丸山三振、前田の三振、山田の強打遂に振はず泣いて退く。
(高松中)武陽健兒守れこの一回を、岡見四球後光宗中堅越の三壘打、嗚呼遂に破れたり、この一戰、この一打遂に恵れざりき。

 神戸二中 000 021 000 0=3
 高松中學 000 000 030 1=4

 (延長10回)

 〔二 中〕 打得安犠三盗四残失
           死  
       數點打打振壘球壘策
 6 牧 野 212101110
 4 石 原 300110000
 7 志 摩 300020220
 3 別 所 411010110
 5 丸 山 401020120
 2 前 田 500020000
 9 山 田 502030020
 1 甲 斐 401010000
 8 中 山 311011120
     計 333821326100

 〔高 松〕 打得安犠盗三四残失
           死  
       數點打打壘振球壘策
 7 岡 見 321000200
 3 光 宗 412100120
 19 中村正 401020010
 91 田 淵 200010210
 2 中村新 301100002
 4 佐 藤 401000010
 6 安 達 200000210
 8 久 本 311000000
 5 山 本 302000011
     計 2849230773

《武 陽》
【第8回京神對抗野球大會出場之記】

▽第一回戰 對神港商業 昭和4年4月6日(土)明石球場

高松より帰校後我等の一途目ざせし大會來る、然も!その劈頭を飾る者今春全國の覇者たり、紫の大旆を得し神港と組みたり、明石球場は好天氣に恵まれ幾多の観衆はファインプレーを待つ。
時正に十一時半。石川球審のプレー宣告に先づ志摩ボックスに入る。

第一回。(二中)志摩よく撰球後二匍、牧野も亦二匍、別所三度二匍に退く。
(神港)後藤四球に出で中根の死球に送られダブルスチールを企て津久井の暴投に一擧生還、西垣投手前飛球、高瀬死球後捕手逸球に二壘に至る、濱崎三振、岸本の一匍失に中根得點を加へ倉の左翼飛球に止む。

第二回。(二中)前田、丸山三振、石原の二匍に凡退。
(神港)寺岡中前飛球、平田四球に出で後藤四球、中根死球に送られ西垣三振、捕手の返球暴投に平田本壘をつき石原の好投に刺さる。

第三回。(二中)山田一壘匍、甲斐四球に出でしが津久井の投匍に併殺され志摩右翼飛球に終る。
(神港)高瀬遊撃匍、濱崎再び遊撃に刺され岸本四球、倉の遊撃飛に終る。

第四回。(二中)牧野二邪飛後三振、別所三壘を襲ひ三壘手の暴投に二壘に生く、前田再び三振、丸山中前飛球に止む。
(神港)寺岡左前飛球、平田三壘の暴投に二壘に至り後藤の三匍失に三壘に至る、中根三振、西垣の中前飛球に止む。

第五回。(二中)石原二匍、山田遊撃匍、甲斐遊撃飛球に刺さる。
(神港)高瀬二−三後右中間を抜く三壘打し濱崎の右飛失に生還、浜崎三壘を窺ひ刺さる、二中よ戰へ雄々しく強く!岸本遊撃安打、倉の左飛に二壘をつき成らず併殺成る。

第六回。(二中)津久井投匍、志摩二匍、牧野三振。
(神港)寺岡、平田三振後後藤三匍に止む。

第七回。(二中)別所第二球を好打して右中間を抜くライナー性の三壘打なし前田の三遊間安打に生還、丸山二匍、前田二匍に刺され石原の三匍に丸山屠れ、山田三振。
(神港)中根中前、西垣左飛、高瀬中飛に止む。

第八回。(二中)甲斐二匍、津久井三振後志摩一二間を抜く安打に出で牧野の遊撃内野安打に送られ別所の左中間の二壘打に二者生還、別所一擧三壘を得んとして刺さる。
(神港)濱崎遊撃匍、岸本二匍、倉の三匍に凡退。

第九回。(二中)最後!二中健兒よ自重せよ、一球といへどもよく撰び打て前田遊撃匍、丸山二飛、石原二匍に終る。
(神港)敵はピンチヒッターを出し先づ四球に送られ又平田ピンチに變り遊撃飛走者二壘を窺ひ刺さる、後藤三匍。

第十回。(二中)山田二匍、甲斐三振、津久井のセーフティバント成らず。
(神港)中根先づ四球に出で西垣の犠打に送られ三壘盗壘を企て捕手の投球を丸山損じ遂に得點せり。
嗚呼前年明石城頭に准優勝に破れ今年又初回敗北の憂目に至る、最後の一秒!
又何をか言はん唯自己の力を省みよ、練習可なるか?夏の大會を目指して屈するなかれ。

 神戸二中000 000 120 0=3
 神港商業200 010 000 1=4

 (延長10回)

 〔二 中〕 打得安犠盗三四残失
             死  
       數點打打壘振球壘策
 7 志 摩 411000000
 4 牧 野 411002000
 3 別 所 312000011
 6 前 田 401002003
 5 丸 山 400001000
 8 石 原 400000010
 9 山 田 400001001
 1 甲 斐 300001100
 2 津久井 300001012
     計 3335008137

 〔神 港〕 打得安犠盗三四残失
             死  
       數點打打壘振球壘策
 3 後 藤 310010221
 8 中 根 220021310
 5 西 垣 401101000
 7 高 瀬 510001110
 6 濱 崎 400001000
 1 岸 本 300010121
 2  倉  400000000
 4 寺 岡 300001100
 9 平 田 300011110
     計 3141156972