《武 陽》
◎對姫路中學戰
昭和8年4月16日(日)明石公園球場 午前11時22分開始 審判・金政(球)
▽2回戰
神戸二中 100 020 105=9
姫路中學 000 010 002=3
〔二 中〕 打得安球振盗失
6 池 田 2223020
4 梶 井 4110000
3 山 脇 4211110
1 野 田 4121011
2 名 倉 5100200
8 松 村 3002000
9 佐 藤 3001300
9 葛 野 1010000
7 能 勢 4011100
5 中 内 3201100
計 339810841
〔姫 中〕 打得安球振盗失
2 山 本 3102100
6 白 木 4021001
8 鍛冶川 4001000
1 釣 4011100
5 高 橋 3001001
9 先 水 4010200
3 黒 田 2002000
4 西 端 0204000
9 豐 田 4000100
計 283412502
△二壘打=野田 △併殺=池田−山脇 △選手交代=九回、二中攻撃の時佐藤に代り
て葛野打ち右翼に入る。 △所要時間=二時間十分。 △ボーク=野田。
第一回(二中)(一)池田四球直ちに二盗、梶井の投匍に三進、山脇投匍、野田の中堅右二壘打に池田生還、名倉三振。
(姫中)(零)山本三振、白木三壘右安打、鍛冶川の遊匍に併殺。
第二回(二中)(零)松村二直、佐藤空振して退き、能勢三飛。
(姫中)(零)釣三進、高橋遊匍、先水三遊間を抜く安打に出たが投手牽制球にかゝって二壘に刺さる。
第三回(二中)(零)中内三振、池田一二壘間を抜き二盗を企て捕手の高投に一擧三進せしが梶井の遊匍に本壘をついて刺され、山脇三振。
(姫中)(零)黒田三匍、西端四球、豐田二匍、山下遊匍。
第四回(二中)(零)野田四球、名倉の三匍に封殺、松村四球、名倉三盗ならず、佐藤三振。
(姫中)(零)白木二匍、鍛冶川三匍、釣、高橋共に四球、先水三振。
第五回(二中)(二)能勢遊撃右を抜く安打、二盗ならず。中内死球、池田とのヒット・エンド・ランは二壘右を抜き右翼に達する安打となり中内三壘をつけば右翼手の送球を三壘手失して中内還り、池田三進、梶井とのスクイズ見事に成り池田生還。山脇三匍失、野田三匍に終りしも二中堂々二點をリードす。
(姫中)(一)黒田、西端共に四球に出たが黒田捕手牽制球に二、三壘間に挟殺、西端其の間に二進、黒田の三匍に三進し投手ボークに生還、山本一匍、姫中一點を酬ゆ。
第六回(二中)(零)名倉二直、松村遊匍、佐藤四球二盗ならず。
(姫中)(零)白木四球、鍛冶川左飛、釣、高橋共に投匍して好機を逸す。
第七回(二中)(一)能勢三振、中内左飛、池田四球二盗、梶井の三遊間突破の安打に還る。山脇四球、野田一飛して終るも二中又一點を加へ勝利を不動のものとす。
(姫中)(零)先水遊匍、黒田、西端共に四球、豐田三振、山本の死球に滿壘となったが白木の遊匍は山本を二壘に封殺して姫中は好機を逸す。
第八回(二中)(零)無為。
(姫中)(零)鍛冶川遊飛、釣中堅左に好打を送る、高橋中飛、先水三振。
第九回(二中)(五)能勢四球、中内の遊匍に封殺、池田も四球を選び梶井とのヒット・エンド・ランは二壘正面をつき池田を封殺、中内三進、山脇の右前安打に中内生還、野田の遊撃右を抜く安打に梶井還り、山脇も三進、野田直ちに二盗、名倉の遊匍失に山脇、野田生還、松村四球、佐藤の代打高野の遊撃左を抜く安打に名倉、松村共に駿足を驅って一擧本壘を陥れ打順一巡して能勢の二匍に終るも二中猛打を振ひ、一擧五點を加ふ。
(姫中)(三)(二中佐藤退き葛野右翼に入る)黒田右飛、西端四球、豐田左飛、山本も四球、白木の左前安打に西端還り山本三進、投手の三壘走者牽制悪投に山本還る。鍛冶川死球、釣遊飛に萬事休し九對三、二中の健棒に姫中退く。時に午後一時四十二分。
〔後記〕この第二回戰は都合上對灘中戰より半月も經た後なので野田のコンディションも元に回復し、正々の陣を張ったが何しろ相手も傳統の有る古豪、池田(現東大)主将時代に甲子園に於いて戰ひ勝ってから久しく顔を合さなかったが、五年振りでこゝに雌雄を決する事になった。
果せるかな敵は年少ながらも中々あなどりがたく、前半の様子では互角の勝負であった。敵投手釣は三年の弱冠ながらも、その大きくゆるく落下するアウドロは甚だ二中の打者にとっては苦手で、一回野田の右中間に放ちたる二壘打に一點を得たるのみで、五回迄は全く牛耳られ五回に到って漸く能勢、池田に連續安打が出、梶井のスクイズ見事になって二點を加へて、やっと安心した程である。
六回以後はやゝ疲れ氣味でボール多く、九回になって遂に壊滅した。守備にこれだけ活躍した姫中は打撃に於いては餘り香しくなかった。此の日野田投手が決して好調でなかったのは與へたる四球十二を見ても分る處である。
今姫中には此の走者を生かす後續打者に元氣を缺いた。姫中が招いた絶好の機會は五回目であった。無死走者一、二壘に置きながらも暴走にチャンスを物にする事が出來なかったのは得點の開の少かった時だけに惜しまれる。
然し姫中の前途を考ふ時、そこに大なる恐を生ずる。全員未だ二、三年の若冠で新に部長として前早大主将佐伯氏を頂き一途覇權に邁進する時いづれは往年の黄金時代を現出するであろう。此の試合個人では姫中、白木、西端兩君の好守、二中、池田の相も變らぬバッティング、走壘等美事であったが、名倉のカーブに弱い事と佐藤の三個の三振は情けなかった。
[第一回縣下中等學校優勝野球大會]
〈神戸新聞〉
昭和8年4月16日(日)明石公園グラウンド 午前11時22分=午後1時42分
▽2回戰
神戸二中 100 020 105=9
姫路中學 000 010 002=3
〔二 中〕 〔姫 中〕
6 池 田 33打數27 2 山 本
4 梶 井 9得點3 6 白 木
3 山 脇 8安打4 8 鍛冶川
1 野 田 1犠打1 1 釣
282 名 倉 4盗壘1 5 高 橋
828 松 村 8三振5 7 先 水
9 佐 藤 10四死12 3 黒 田
7 能 勢 8残壘10 4 西 端
5 中 田 2失策5 9 豐 田
〔二壘打〕梶井、野田〔併殺〕梶井−山脇〔試合時間〕二時間二十分
〔一回〕二中、池田四球、直ちに二盗、梶井の投匍で三進したが、山脇の投匍に三本間に挟殺、續く野田右中間二壘打を放って山脇生還、一點を先取。
△姫中、山本三振の後白木三遊間安打に出たが鍛冶川の遊匍に併殺。
〔二回〕二中、松村二直、佐藤三振、能勢三飛。
△姫中、釣三振、高橋三匍の後先水三壘上を抜く安打に出たが離れ過ぎて一、二間挟殺。
〔三回〕二中、中田三振後池田の二強襲安打を中堅手トンネルして一擧三進したが續く梶井の遊ゴロに本壘に憤死、山脇三進。
△姫中、黒田三匍、西端四球、豐田二匍、山本遊匍。
〔四回〕二中、野田四球、名倉の三匍に二封、松村四球、佐藤三振、名倉三盗成らず。
△姫中、白木二匍、鍛冶川三匍の後釣、高橋共に四球に出たが先水三振。
〔五回〕二中、能勢投手抜く安打に出たが捕手牽制球に刺され、中田死球に出で續く池田の右前安打を野手三壘に暴投して一擧生還、池田三壘の時梶井のスクイズで池田も生還し二點を擧ぐ。
△姫中、黒田、西脇共に四球を得たが黒田捕手牽制球に二三壘間に挟殺、西脇二進、豐田三匍に西脇三進し、投手ボークで生還一點をかへす。
〔六回〕二中、名倉二直、松村遊匍の後佐藤四球を得たが二盗ならず。
△姫中、白木四球、鍛冶川左飛、釣、高橋共に投匍。
〔七回〕二中、二死後池田四球を得て二盗し、續く梶井の三遊間安打に池田生還、又も一點を奪ふ。
△姫中、一死後黒田、西端共に四球、豐田三振後山本も死球で二死滿壘となったが白木の遊ゴロで山本二封に終りチャンスを逸す。
〔第八回〕二中凡退。
△姫中、釣の中前テキサスがあったが後續なし。
〔九回〕二中、能勢四球に出で、中田の遊ゴロに二封、池田も四球、梶井の二匍に池田二封となったが續く山脇、野田は各右中前安打、名倉遊匍失、松村四球、佐藤内野安打などで打者一巡し能勢の二飛に終るまでこの回亦も五點を擧ぐ。
△姫中、一死後西端四球、豐田左飛後山本も四球、白木の右前安打に西端生還、山本も投手牽制暴投に還り二點をかへしたが結局九對三で二中勝つ。
(閉戰午後一時四十二分) |
|