第1章 守 備 戦 法 の 基 礎

第1項 基本

(基本)
ゲームの作戦は、言うまでもないことながら、次の3つの事実、すなわち両チームの得点数、アウト数、イニングの数によって決まる。
選手は、守備面に関して、次の3つの質問の答えを用意しなければならない。
 

(1)どんな時に、チームは前進守備をとるべきか。

(2)どんな時に、相手に得点を許してもよいか。

(3)どんな時に、相手に得点を許してはならぬか。 

前進守備をとった場合には、当然ながら内野手は、深く守備している時ほど広い範囲を守ることが出来ないから、攻撃側が非常に有利になる。

この場合には普通2割5分の打率の選手も、たちまち5割打者になれると言われるほどだ。
守備陣は相手に与える得点が、ゲームの勝敗に関係しない場合のほかは絶対に前進守備をしてはならない。

言葉を変えて言えば、前進守備とは、絶対に1点を与えてはならぬ場合のみ、行うべきものである。 

第2項
常に深く守り、たとえ同点の走者の生還を許しても、勝ち越し点になる次の走者が得点圏に進むのを防がなければならない。

(A)どの選手も正しい時に、正しい場所にいること。

(B)どの選手もボールを取ったら、そのボールをどう処理せねばならぬかを
   心得ていること。
 

どの守備位置にも、全ての選手が従わねばならない基本的守備条件がある。

(守備の心得)

l        サインを忘れないこと。見誤らないこと。アウトの数を忘れないこと。

l        確実にアウトの数を増やすことを忘れるな。

l        いつでも次のプレーを考えておけ。

l        無理と思われたら送球を中止せよ。送球の失敗は相手方に2個の塁を与える。

l        味方の失策を責めるな。慰めてやれ、自分の失策を気にするな、再度失策する。

l        特に凡ゴロ・凡フライに注意せよ。
近くにいる者は球が味方のグラブに入るまで油断するな。

l        球はできるだけ速やかに捕り、そしてすぐに投げよ。
全て確実第一、余り手加減するとかえって失敗する。

l        一つのプレーに失敗したなら、別の方法にて敵を刺すことに努めよ。

l        球を捕ろうとした時、走者を見るな、ファンブルして拾おうとする時又同じ。

l        投手の球質、その他の理由で守備位置を変更する必要を生じた時、余り早く位置を変えるな、敵に悟られる。

l        各野手ともバックアップを忘れてはならない。カバーを忘れるチームは守りの不備を暴露する。内外野ともカバーは命掛けでやれ。

l        外野手は、速やかに球を内野に送れ、外野にて走者が球をタッチされた例はない。

l        外野手の遠投は、必ずワンバウンドにて行え。

l        挟撃は、極めて球数少なくアウトを取れ、長引けば失敗する。

l        飛球でも、ゴロでも、二人以上集まって球を捕ろうとした時には、必ず「ヨシ」と云う声を使え、早く声をかけた者が捕る。
声をかけた後、ボールに変化があっても、あくまで声をかけたプレーヤーが処理せよ。

l        走者、盗塁を企てたる時、飛球が上がったら野手はいかにも封殺するような姿勢をとり併殺を策してみよ。

l        走者が飛球にて次の塁を奪わんとした時は、よくその足に注意せよ。早かったら「早い」という様な声をかけて、走者の走力を鈍らせ審判の注意をひく。

l        二点以上を勝越している時は、無理をして走者を殺そうとしてはならない。
失敗すれば危機を招く。確実にアウトをとっておけば、安打されぬ以上得点を与えることがない。

l        アウト本位の守備を忘れるな。1点を惜しんで2点、3点を失うは戦いの拙なるもの。

l        敵を侮るものは失敗する。如何に勝越していても気を許してはならぬ。
ゲームセットが宣告されぬ以上、勝敗は決定しない。

l        元気のない守備には失策が多い。常に球を征服する元気あれ。

l        如何に劣勢にあるも意気消沈するな。最後までベストを尽せ。
何十点負けても選手の意気さえ衰えなければ、試合精神は充分に存在する。

l        練習に泣け、敗れて泣くな。敗戦に泣く者は、練習に泣かぬ者である。

l        しかし敗戦を忘れてはならぬ、あくまで回復を図るの強烈なる熱がなくてはならぬ。

l        よきプレーは機知にある。機知に富む者は、味方を危機より救い上げる。
機知は、練習に頭脳を使うものに与えられる。

l        試合にも練習にも熱がなくてはならぬ。熱のある者のプレーは生きている。

l        大胆なれ、一度決めた事は躊躇なく行え。

l        1点を分岐として争う終回には、四球戦法・内外野前進守備等、背水の陣をしけ。

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