第5章 ベースランニングの基本

ス タ ー ト

打者は、その打球によって進塁出来るベースにつくまで、絶対に走るのを怠ってはならない。外野手の捕球が、どんなに確実と思われても、そのフライを落とすこともあり得るのだし、最も巧みな内野手でも時には許しがたいファンブルや、悪送球をおこなうものである。

野球では何事においてもそんな事は当然だ、という考え方をしてはならない。
もし、外野にヒットを打ったなら、一塁ベースに向かって全力疾走を行い、その打球が相手の外野手によって処理されるのを見ながら一塁ベースの上で転回する。(方向を変える)

その時、外野手が、ファンブルをしたり、不利な体勢になっていることを認めたら走者は、すぐさま次のベースの進塁を試みなければならない。

ピ ポ ッ ト (転回)

走者は、自分が回ろうとしているベースから、四歩ほど手前のところにきたなら、左右を軸にしてピポットする。
すなわち、右足を地面につけた時、体の重みをその足にかけ、ころばないように左右を交叉させて前に出し、バランスを保つ。

この左足が地面につく時、走者の体は右足の動きのため、次のベースの方向に向くわけである。
ベースの2,3歩手前でおこなうピポットによって小さな弧ができるが、この弧のために走者は次のベースに向かってほとんど直線の状態で左右どちらの足でも(左足の方が望ましい)ベースに触れることが出来るような位置)にくるわけだ。

ベースにつく寸前に、最後の2,3歩を小股にしてはならぬ。
全てのピポットはフルスピードで、しかも普通の歩幅で行わねばならぬ。

ス ラ イ デ ィ ン グ  

走者が、ベースをオーバーランするのを防ぐことであり、また相手内野手にタッチされる体の部分を出来るだけ小さくするためのものである。

すべりこもうか…いや、やめたほうがいいかな、という迷いほど全く愚かなものはない。
突然止まったり、半歩ですべりこんだり、またベースの真上に体を投げ出したりするすべりこみは、体に大きな損傷を招くもととなる。
精神的動揺ほど、かかとの捻挫、足の骨折、その他のケガの原因となるものはないからである。

走 塁 に つ い て  

(1) スタートで
 

 (イ)投手の投球動作を知ること。

 (ロ)安全圏以上に出ることは、却ってスタートを遅らせることになる。

 (ハ)スタートはなめらかにすること。助走が必要である。

  (ニ)いつでも前進、後退できる体制にいること。
   これにはつま先で動作するフットワークが必要である。

  (ホ)塁を離れて出ている走者は、球から目をはなさないこと。
   踵をつけないこと。この2つが必要である。

(ヘ)走者は、打球の方向(中、右、左の飛球、安打、内野ゴロの場合)によ
   り自分のとるべき処置をあらかじめ考えて置くこと。

   打者が打席に入るときの心構えを決めておくこと。
   投手が打者に投球する時、自分はどんな球を投げようとするか、その決
   心をすること。

   同じように走者は、次の打球に対しどうするかという決意を、あらかじ
   め心に決めておくこと。
   しかもこれがとっさの間に頭の中にひらめかねばだめである。

   この心構えは走者だけでなく、打者、投手、各守備者、走者など選手の
   全部が持たねばならない心構えであって、この心構えが瞬間の間に出来
   なければ決して名選手にはなれない。
   この心構えがあってこそ、相手の先を制することが出来るのである。

 (ト) 走者は、相手チームの守備位置をよく頭の中にあらかじめ入れて置くこと。
さらに外野手の肩の強弱、風の方向なども考慮に入れて置くこと(守備側、打者側も同じである。)

 (チ)走者は、投手の球をよく見、球から眼を離してはならない。
打者が打とうとする球、その球を見て動作をとらなければならない。
漠然と打者の打つ姿を見ていては、スタートの失敗する時がある。

    必ず打者の打つ球、バットから離れる球を見るのである。
これは各守備者、外野、内野手がバットを離れる球を見て動作のスタートをするのと全く同じである。

(2)

走者は打者の意図を考えてプレーせよ。

(3)

常に次塁に生きることを念願して油断するな。
次塁を得れば、さらに先の塁のことを考えよ。

(4)

ヒットエンドランは打者のみがすべきではない。
走者が積極的に盗塁し、打者がこれに合わせて打って行く姿が、むしろ正しいものである。

(5)

走者は、自分が刺殺された場合、又は本塁に入ったのち、直ちに前後の走者のことを考え、これの走塁の援助を忘れるな。

(6)

打者、走者共、互いに共同プレーに考えを置くこと。
走者と走者の間も同じである。

(7)

デイレードスチールも有効なプレーである。

(8)

足の遅いといわれる走者程、盗塁は可能である。

(9)

盗塁には果敢な精神が必要である。

(10)

スタートに失敗すれば走るな。

(11)

コーチャーを利用せよ。コーチャーに頼れ。

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