第 2 章 バ ッ テ イ ン グ

第1項 打者としての条件

好打者とは、当然のことながら、よく打つ選手のことをいう。
バッティングとは、単にボールに向かってスイングして、どれぐらい飛ばせるかということでなく、むしろ自然のスイングによって、ボールの真芯に当てることだということを選手はよく自覚すべきである。

よい素質の好打者が、持っている未熟な技術を改善させるために、いろいろな手を尽くす事が出来る。

コーチは、どんな打者でも、よりよい打者に訓練することが出来る。
しかし、ほかの点ではよい選手でも、生まれつきよいバッティングの素質を持っていなければ、コーチといえども彼をよい打者に仕立てることはできない。

選手は、みな独自のバッティングスタイルを持っている。そしてこのようなスタイルは次のような有害な習慣を伴わないかぎり持ち続けるべきである。

その有害な習慣とはプレートから体を引いたり、バットを振る時に、一方の肩を落としたり、ひざを折って背をかがめたり、体を回したり、ボックスで極端に前や後ろに立ったり、大きく踏み出しすぎたりすることだ。

よい打者とは、よい目、正しいスタンス、完全な踏み出し(ストライド)、欠点のないスイングを有していなければならない。

打者の中には、良い投手の投げるあらゆる種類のボールに、手あたりしだいに手を出すものがいるが、こんなめちゃくちゃなバッティングよりは、プレートの上を通る好球を選んで打つ一撃のほうがはるかに重要である。

打者の目が、ボールについていけないことが、スランプの原因になる場合もある。
打者のスランプには、さまざまな原因があるが、それらすべての根底にあるものは、タイミングの狂いである。
 

第2項 バッテイングの4条件

 (1) よい目を持っていることが、バッティングにおいて最も重要な事である。
バッティングの姿勢をとっている間は、頭を動かさずにいなければならない。
投手が投球を始めた瞬間から、そのボールがスイングされるが、捕手によって捕球される瞬間まで目をボールから離さないようにする。

打者の目は、バットがボールを打つのを一心に見つめ、そのボールをあくまで追うべきである。
頭を動かさず、ボールに油断なく目をそそいでいることが、打者としての最大の条件の一つである。

 (2) 正しいスタンス
良いスタンスをとれば、よい踏み出しと、よいスイングが出来る。
出来るだけ楽な姿勢で両足をしっかりと地面につけ、体重のほとんど全部後足にかけて立つ、両足は、楽なスタンスの範囲内で出来るだけ近づけるようにするのがよい。

 (3) 踏み出し
バットをボールに当てるのは、踏み出しの前であっても、後であってもならず、重心が両足に同時にかかった瞬間におこなうべきである。
後足から前足に移る時の体重によって、ボールにかかる力が生じるからである。

   ●ステップの幅
 最初に構えたスタンスから足一つ分が理想。
 このくらいだと上下の動きが殆んどなく、正確な打撃が出来る。
 広すぎると、腰の回転が、不十分のうえ上下動が激しすぎて、正確な打撃が出
 来ない。
 また、狭すぎると、投球の勢いに負けてしまう恐れがある。

   ●しっかりと踏み出す
 前足の側面を、投手に対して並行な形で踏み出す。
 前足のつま先が、開いて投手の方に向くと、体が開いてしまい、打ちにくくな 
 る。
 逆に斜め前方に踏み出すと、内角が打ちづらくなる。

 (4) バットの正しいスイング
バットのスイングは地面と平行に、かつ水平におこなわねばならない。

   ●腰の回転
 前足のステップの次は、腰を回転して投球を打つ。
 打つ時、バットで打つというより、腰で打つといった感じがいい。

●体重の移動
 体重は、バックスイングの時、後ろ足に移すが、打つ時は体重をやや前足に移
 し、両足でしっかり踏ん張って打つ。
 体重を前足に全部移してしまうと、つんのめる格好になってしまい、正確な打
 撃が出来ない。

   ●わきを締める
 両方のわきを締めて打つようにする。
 これでスイングが、コンパクトになる。

   ●腕の使い方
 右打者の場合は、左腕でリードして打つようにする。
 右腕は打つ瞬間に力を与える。右腕で打とうとすると、正しく投球をとらえ 
 る事が出来ない。

   ●手首はねじるように
 打った瞬間、手首を鋭く返す。その返す時、バットを握った上の手をねじ
 りながら、下の手にかぶせるようにする。

   ●フォロースルー
 遠くへ飛ばしたり、強い打球を打ったりするには、打った後の動作が大事で 
 ある。打った後、力を抜かないことが大切である。
 当てるだけでは、ヒットになりにくいので、普段からフォロースルーの重要さ
 を認識して、最後まで振りぬくスイングを練習することが大事である。。
 

第3項 打者の心得

 (1) 打者は先ずいかなる方法によっても、必ず一塁に生きる信念に燃えていなけれ ばならない。
 生きる方策;四球、死球、安打、敵失、走力

 (2) 打者と相手投手とは1対1の真剣勝負である。
常に投手に勝つために全力を尽くすべきである。
一度負けても、次回には必ず勝つ事を考え、2度目に敗れれば、3度目には必ず勝つ。3度目に敗れれば、更に、次にいつかは勝ってみせるという戦闘精神が必要であり、勝つための研究が必要である。

 (3) 長打を狙うな、常に 、球にバットを正確に、鋭くミートすることを考えよ。
鋭く正しく球にミートする、その結果、長打が出るということを知って置かねばならない。

打撃の秘訣は「球を見て打つ」これ以外には方法はない。

 (4) 飛球を打つな、飛球は走者との共同動作を阻害するほか、打撃の乱れる始めである。

 (5) 打者は 、塁上の走者を少なくとも1つ進塁させることを考えて打席に立たなければならない。
走者をワンベース進めることは、打者の絶対責任である。
また、走者も打者に対して協力しなければならない。
  方法としては(右ねらい、ヒットエンドラン、バント、盗塁)

(6)打者は、アウトの数、走者の有無、走者の塁に於ける状態、打者のカウント、
 これに応じて、打者は、次に何をするんだということを決定すると同時に打席に
 立つ時には、はっきりその決心を決めて置かなければならない。

   無意識のまま打席に立っている為に、相手投手に先んじられて制せられる場合が
 多く、これでは投手との
1対1の立合いは、その第一歩で負けである。
 打者は、先ず相手投手に対し気合で勝ち、頭脳で勝つ、しかも相手投手を出来る
 だけ苦しめる。

  試合は1イニングで終わるのではない。9イニングであり、打者は9人である。
 一丸となって強い気合で投手に立ち向かえば、どんな投手といえども打ちくずせ
 ない筈はないのである。
 打者が単独に身勝手な攻め方をしていては、平凡な投手でも打ちこめない。

  ここにチームの強さ 、粘り、戦闘精神というものが発揮される。
 各打者が、みんな気を揃えて投手を苦しめ、投手の弱点をつき虚に乗ずる心構え
 がなくてはならない。

 (7) 打者は右翼打(12塁間)の必要なこと、そしてこれがどれほど有利である
 かをよく知って置かなければならない。

  しかも1,2塁間に向かって打つに最も都合のよい真中から外側の球は、殆んど
 の投手が好んで投げてくるし、打者の頭さえ働かせば相手に乗ずる虚はどこに
 も転がっているという事を考えなければならない。

  (イ)相手投手の研究

  (ロ)相手投手に乗ずる虚はどこにあるか

  (ハ)相手内野手の守備の構え

  (ニ)相手外野手の守備の構え

  (ホ)その日の風の方向
 
(8)打者は力いっぱいスイングすることは避けねばならない。
   正しく、鋭く、球にミートするということは
8分の力でスイングせよとことで
   ある。

     
力いっぱいスイングすると頭、眼がゆれて動く、正しく球にミート出来ないとい
   うことである。


   力いっぱいスイングするという気持が、結局は鋭くバットが振れることを妨げて
   いるのである。
   鋭く振るというのは、バットを鋭く振ることであって、身体が強く動くことでは
   ない。

 (9) 以上のことを知ってそれに適応できる打法、頭脳をよく平素訓練することが必
   要であって、以上の事を頭の中によく入れておいても、手腕がこれに伴わなけれ
   ば結局はものの役に立たない。
   実戦で、また練習で充分な経験をすることである。

   たとえ手腕を持っていても、上記のことがわからなければ、宝の持ち腐れとでも
   云うかチームに益することは非常に少ない。
   むしろチームに害になる場合さえ生ぜしむることを考えなければならない。

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