観 戦 記           元デイリースポーツ社記者、47陽会、浜田直人氏
 

 白球は、一塁側応援席の歓声に押されるようにグングン伸びた。柵代わりの左翼ネットのはるか上を越える起死回生の同点2ラン。3回、殊勲打を放った森脇は「内角寄りのストレート。手ごたえはあったので入ると思った」と喜色満面だ。

 無理もない。森脇にとって、ホームランは公式、練習試合を通じて「高校生活では初めて」の記念弾なのだから…。「これで試合の流れは変わる」。ベンチで中井監督はほくそ笑んだ。

 その通り、兵庫は6回に一死満塁から、児島が神戸の捕手の打撃妨害を受ける幸運に恵まれ勝ち越し。「それまでの打席がさっぱり(3打席3三振)だったので、なんとか貢献できてよかった」とホッとした表情。さらに二死満塁から森脇が押し出しの四球で差を2点に広げる流れのよさ。

 それにしても、森脇の暴れぶりはどうだ。8回、4打点目の右中間への適時二塁打。完投の桝本は「先制されても、打線が逆転してくれると信じていた。制球が悪かったが、山下(捕手)がうまくリードしてくれた」とバックに感謝した。

 定期戦では3年ぶりの勝利。岡田主将は「今年は創立100周年。それに花を添えるためにもどうしても勝ちたかった」と白い歯をのぞかせ、3年目で初めて味わう定期戦での美酒に酔いしれているよう。

 「粘り勝ち。絶対負けられないという選手の気持ちがこの結果に結びついた」。中井監督は満足げ。敗れた神戸・辻監督は「昨秋の練習試合の時から比べ、兵庫さんは攻守にチーム力は上がっている」との感想をもらした。