[第4回扇港野球大會]
大正5年11月5日(土)鳴尾グラウンド 午前9時40分開始 11時30分
審判(球)松岡 (壘)今井
關學普通部 010 100 1=3
神戸二中 203 000 X=5
打得安三四犠盗失 打得安三四犠盗失
〔二 中〕 死 〔關 西〕 死
撃點打振球打壘策 撃點打振球打壘策
4 箸 倉 31011001 2 近 藤 41000001
5 岸 本 31201011 7 粟 田 30020010
2 睦 好 32101001 5 生 駒 40100000
8 兒 島 20100100 6 加 藤 40020002
1 今 村 31100000 1 内 海 21001000
9 北 澤 30020010 3 北 村 21101200
3 渡 邊 30010000 8 濱 谷 30100000
7 楯 谷 30000000 9 根 岸 30010000
6 三 宅 30000000 4 石 原 30100000
265543123 283452213
〔評〕二中は一回、一死滿壘から今村が左前に適時打して2點を先行。關學普通部はすかさず2回捕手の三壘悪送球で1點を挽回した。しかし、3回二中が岸本の安打を口火にバント、敵失を絡ませ決定的な3點をあげた。關學普通部は4、6回各1點を返したが、及ばなかった。
▽第一回 關西軍近藤中堅に飛球を獲られ次で粟田三振し、生駒遊撃を失せしめて出で加藤亦遊撃の失に生きしも内海二壘に匍球を送り加藤封殺されて二中軍代り攻む、箸倉死球に出て岸本三壘匍球に殪れ睦好四球を利し兒島三壘に匍球を送りて出で茲に滿壘となり好機至る、次で今村遊撃を抜く安打に箸倉、睦好轡を並べて生還し二中軍の陣容大に好し、次で北澤三振を喫し渡邊一壘にファウルを獲られて止む(二中二點、關西零)
▽第二回 關西軍北村遊撃を襲ひて出で濱谷遊撃匍球に殪れ其間北村三壘を盗まんとし捕手の暴球に長躯本壘を陥れ茲に一點を恢復したるも根岸、石原共に投手匍球に殪れて已み二中軍代り攻む、楯谷遊撃匍球に出で次で三宅亦投手に匍球を送り其間楯谷二壘に封殺され箸倉、岸本の三振に終る(關西一、二中零)
▽第三回 關西軍近藤右翼の安打に出で粟田投手匍球に死し、次で生駒の遊撃匍球に近藤二三壘の狭撃を突破して無事三壘に入りたるが踵で本壘を陥れんとし又亦狭殺に遭ひ刺され加藤の三振に止む、二中軍代り攻む岸本二壘越の安打、睦好亦好安打に出で兒島犠牲球に二走者累進す、
次で今村三壘匍球を壘手取り本壘に躍進せる岸本を刺さんとして暴球を投じたるが破綻の因となり岸本、睦好相踵で生還し後援北澤亦遊撃を失せしめて今村生還したるも渡邊三振、楯谷投手匍球に死して止む(二中三點、關西零)
▽第四回 關西軍内海、北村共に四球に出で濱谷一壘匍球に内海生還したるも北村三壘を盗まんとして挟撃に遭ひ死し根岸三振、石原三壘越安打に出で近藤遊撃に匍球を呈したるも石原二壘に封殺されて止む、二中軍代り攻む三宅捕手にファウルを獲られ箸倉投手匍球に死し岸本四球に出で睦好右翼に飛球を獲られて終る(關西一點、二中零)
▽第五回 關西軍粟田三振、生駒二壘に匍球を送りて生き加藤三振の後生駒二壘を盗まんとして刺され二中軍代り攻む、兒児島中堅オーバーの安打に一擧二壘に進み次で今村二壘を襲ひ其間兒島三壘を盗まんとして封刺され北澤の三振、渡邊の投手匍球に止む(兩軍零)
▽第六回 關西軍内海投手飛球に死し北村二壘安打、濱谷三壘匍球に出で次で北村三壘を奪はんとして刺され根本二壘匍球に死す二中軍代り攻む、楯谷三振せしも捕手の失に生き三宅遊撃に匍球を呈し楯谷二壘に封殺さる、次で箸倉二壘に匍球を呈し三宅亦三壘に封殺され岸本左翼安打に出でたるも睦好三壘匍球に箸倉亦三壘に封殺さる、
關西軍最後の決心凄じく結束して起ち石原遊撃に飛球を獲られし後近藤中堅越の安打に一擧三壘迄躍進し以て粟田の巧妙なるバントに近藤生還、生駒左翼越の安打に二壘迄躍進したるも加藤中堅に飛球を獲られ茲に萬事休し五A對三にて二中軍の勝利に歸す時に十一時半。
《武 陽》
◎對關西學院中學部戰
神戸一中に勝利を得たる我軍は更に其の翌日今夏の恨深き關西學院中學部と干戈を交へぬ。カーキー色のユニホームに身をかため白鉢巻の姿雄々しく必勝を期して運動場に立つ九戰士は用意充分整ひ試合開始の時間を待つ。九時四十分審判官のプレーを宣する聲場内に響き渡りぬ。
第一回、敵軍先攻し近藤中堅飛球に死し粟田三振の後生駒、加藤遊撃及三壘の失に生きしも内海の二壘グラウンダーは加藤を二壘にフォースアウトたらしむ。箸倉死球に出で岸本の犠牲球によりて二壘に進み睦好四球を利し兒島三壘を衝きて生き滿壘となる。
次にボックスに現れしは我が軍の主将今村なり。彼の滿身の力を篭めて振りたるバットには戞然として聲あり。球は遊撃二壘を抜く絶好の安打にして箸倉、睦好本壘に入る、北澤三振し渡邊一壘飛球に斃れて兒島、今村残壘。
第二回、北村一壘の失に生き二壘を盗み更に三壘を盗まんとして捕手の暴球に乗じて本壘に入る。濱谷遊撃匍球に死し根岸、石原共に投手を衝きて成らず。楯谷遊撃を襲ひて生き三宅投手に匍球を呈し為に楯谷二壘に刺され、箸倉三振し三宅二壘を盗まんとして刺さる。
第三回、近藤右翼に安打し粟田の犠牲球に二壘に進み生駒の遊撃匍球に三壘に至りしも更に本壘を窺はんとして挟殺され加藤三振して代る。岸本二壘越の安打に出で睦好、内野安打に一壘を得續く兒島の犠牲球に壘を進め今村の三壘グランダーに岸本、睦好本壘に入る。北澤の左翼安打に今村生還せしも渡邊、楯谷凡死して北澤残壘となる。
第四回、内海、北村共に四球を利し更に盗壘して三、二壘に據る。濱谷の三壘匍球に内海生還せしも北村三壘に刺され根岸三振の後左翼に石原安打を飛ばし續く近藤の遊撃グラウンダーに石原二壘に刺されて止む。三宅、箸倉凡死の後岸本四球に出でしも睦好右翼飛球に死して残壘。
第五回、粟田、生駒三振し加藤二壘の失に生きしも二壘を盗まんとして殺さる。兒島中堅左翼間に二壘打し、今村の投手匍球に三壘に刺され北澤三振し渡邊投手を襲ひて斃る。
第六回、内海投手に死し北村中堅に安打せしも盗壘せんとして刺され、濱谷三壘グラウンダーに生き續く根岸二壘匍球に死す。楯谷ナットアウトに生き三宅の遊撃グラウンダーに二壘に刺され、三宅も亦箸倉の遊匍に二壘に刺され續く岸本の安全打に走者は一、二壘にあり睦好の三壘グラウンダーに箸倉フォースアウトさる。
第七回、一死の後近藤中堅越の三壘打に出で粟田の犠牲球に入壘す。生駒左翼越の二壘打に出でしも加藤の中堅直球に斃るゝに及び五+A對三にて大勝す。時に十一時三十分なり。球審松岡、壘審今井
關學普通部 010 100 1=3
神戸二中 203 000 X=5
打安三四補刺得
〔關西軍〕 撃全 死殺殺
數球振球數數點
2 近 藤 4200251
7 粟 田 3020000
5 生 駒 4100220
6 加 藤 4020220
1 内 海 21011101
3 北 村 2001051
8 濱 谷 3000000
9 根 岸 3010010
4 石 原 3100020
合計 2855217173
〔二中軍〕
4 箸 倉 3010221
5 岸 本 2201211
2 睦 好 3101362
8 兒 島 2100020
1 今 村 3100911
9 北 澤 3120000
3 渡 邊 3010060
7 楯 谷 3010000
6 三 宅 3000330
合計 2565219215
【神戸二中 優勝】
〈神戸又新日報〉
[第4回扇港野球大會]大正5年11月5日(日)鳴尾グラウンド
午後3時10分開始 5時20分閉戰 審判(壘)今井(壘)鈴木
▽優勝戰
御影師範 000 000 0=0
神戸二中 105 201 X=9
〔評〕1回睦好の適時打で1點を先取した二中は3回にも四球、バント、敵失、犠牲打などで御影師範を混乱に陥れ5點を加え6−0と大量リード。4回2點、6回1點を加えて大勝した。
二中の今村は好調。御影師範につけ入る隙を与えない。結局許した安打はわずか2。一人の走者もホームを許さなかった。
打得安三四犠盗失 打得安三四犠盗失
〔二 中〕 死 〔御 師〕 死
撃點打振球打壘策 撃點打振球打壘策
4 箸 倉 40010000 8 石 田 30011000
5 岸 本 23102030 4 藤 川 40130002
2 睦 好 41100010 1 陸 井 20101100
8 兒 島 32000110 6 岩 崎 20001001
1 今 村 31010100 3 稻 岡 20021001
9 北 澤 31001000 5 樋 口 20001102
3 渡 邊 10012100 9 前 田 20001000
7 楯 谷 31100000 7 伊 藤 20001000
6 三 宅 30100000 2 鴨 川 30020000
269435350 200287206
▽第一回 御師軍石田四球に出でたるも二壘を盗まんとして刺され、藤川三振の後陸井、岩崎續いて四球に出でたるも岩崎二壘を盗まんとして成功せず止む、二中軍代り攻む、箸倉遊撃匍球に殪れ岸本四球を利して出で直に二壘を盗み、睦好の二壘安打に岸本生還し、兒島の三壘匍球に睦好二壘に封殺され今村の三振に止む(御師零、二中一點)
▽第二回 稻岡四球を利して出でたるも二壘を盗まんとして刺され、次で樋口、前田、伊藤の三者共に四球を利したる時投手今村、兒島に代り投手の位置に就き、巧みなるコントロールにて、鴨川を三振せしめ石田右翼飛球に止む、二中軍代り攻む北澤三壘匍球に殪れ渡邊四球を利し、楯谷二壘越の安打して出で、三宅三壘にファウル飛球を獲られ箸倉の三振に止む(兩軍零)
▽第三回 御師藤川中堅に安打して出で、陸井三壘を衝き岩崎投手バントに生き茲に無死滿壘となり、好機臻りしも稻岡の三振、樋口三壘の藤川とヒットエンドランのサインを交はして成功せず、本壘間近に臨んで遂に刺さる、前田の三振に空しく好機を逸し去りぬ、二中軍岸本四球を利し睦好三壘匍球に殪れ兒島一壘にバントし茲に睦好生還、
次で今村遊撃を失せしめ北澤死球に出で渡邊の中堅犠牲球に兒島、今村相踵で生還し、楯谷の二壘匍球を壘手逸し北澤生還す、次で三宅遊撃の失に生き一壘の失に二壘に進み、次で三壘を窺はんとせる時箸倉三壘に匍球を送り、三宅封殺されて止む(二中五點、御師零)
▽第四回 御師軍伊藤二壘匍球に殪れ鴨川三振、石田遊撃飛球に止む、二中軍岸本右翼右の安打に直ちに二壘を盗み睦好の三壘右にバントするを壘手為すなく遂に岸本をして生還せしむ、兒島巧妙なる犠打を投手に放ち睦好を三壘に進め續く今村亦復投手犠打を放ち睦好生還せしも北澤の二壘飛球に止む(二中二點、御師零)
▽第五回 藤川三振し陸井三壘越の安打に出たるも、岩崎の三壘匍球に封殺され稻岡の三振に得點なし、二中軍渡邊四球を利して楯谷左翼右の安打に出で、三宅亦右翼に安打し、又亦無死滿壘となりしも箸倉のバンドを投手取るより早く本壘に驀進せる渡邊を殺し、岸本の二壘匍球を壘手取りて楯谷を本壘に刺し、續く好遊撃に匍球を呈し岩崎直ちに之を本壘に投じ三走者をして本壘間近に美事憤死しむ(兩軍零)
▽第六回 御師樋口一壘に直球を、前田亦二壘に飛球を獲られ、伊藤の左翼直球を楯谷美事發止と片手に之を獲り、二中軍代り攻む、兒島遊撃を失せしめ今村遊撃飛球に死し、此間兒島は直に二壘を盗み直に三壘を奪はんとするに捕手三壘に暴投したるにより一擧本壘を陥れ、次で北澤一壘に凡打し渡邊の三振に止む(二中一點、御師零)
▽第七回 御師最後の結束も甲斐なく鴨川一壘に飛球を呈し、續く石田、藤川三振を喫し万事休し遂に九A對零にて二中軍愈々本大會學校團優勝の月桂冠を勝ち得たり、時に五時過ぐる二十分なりき。
《武 陽》
◎對御影師範戰
午前中に關普を大敗せしめたる我軍は午後御影師範と争覇戰を行ひぬ。午後三時敵軍先攻し今井(球)鈴木(壘)兩氏審判の下に戰の幕は開かれぬ。
第一回、石田四球に出でしも二壘を盗まんとして刺され藤川三振の後陸井、岩崎共に四球を利せしも岩崎投手牽制球に斃れて止む。一死の後岸本四球に出で盗壘を重ねて三壘に進み睦好の犠牲球に本壘に入る。續く兒島の三壘グランダーに睦好二壘に刺され今村三振して残壘。
第二回、稻岡凡死の後樋口、前田、伊藤四球に出でゝ滿壘となるや今村、兒島に代りてプレートに立つ。鴨川三振し石田右翼飛球に死して三者残壘。一死の後渡邊四球を利し楯谷の安打に二壘に進みしも後援續かず。
第三回、藤川右翼に安全球を打ち陸井、岩崎三壘及び投手を襲ひて生き滿壘となりしも稻岡、前田三振し樋口投手グランダーに死して残壘。岸本四球に出で睦好の犠牲球に壘を進めしを先頭に敵の失策に乗じて打者九人を出し一擧六點を占めて大勢既に定まる。
第四回、敵の凡打の後岸本、睦好安打に出で兒島、今村の犠牲球に二者入壘し北澤の二壘飛球に死して代る。
第五回、藤川三振の後陸井左翼安打に一壘を得しも岩崎、稻岡凡死して残壘。渡邊は四球に楯谷、三宅共に安打に出でゝ滿壘の好機を作りしも後援續かずして得點なさず。
第六回、敵軍は投手今村に打撃を封ぜられ三者凡死に終る。我軍兒島好打して機に乗じて本壘に入り累計九點を算す。
第七回、鴨川一壘飛球に死し石田、藤川三振し遂に我軍は九+A對○にて光栄ある優勝旗を授與せられたり。時に午後五時三十分なり。
▽優勝戰
御影師範 000 000 0=0
神戸二中 105 201 X=9
打安三四補刺得
〔二中軍〕 撃全 死殺殺
數打振球數數點
4 箸 倉 4010140
5 岸 本 2102113
2 睦 好 32002101
18 兒 島 3000202
81 今 村 30101001
9 北 澤 3000011
3 渡 邊 1012040
7 楯 谷 3200040
6 三 宅 3100010
合計 2563416259+A
〔御影軍〕
8 石 田 3011010
4 藤 川 4130110
1 陸 井 2101710
6 岩 崎 2001220
3 稻 岡 2021040
5 樋 口 2001420
9 前 田 2011000
7 伊 藤 2001000
2 鴨 川 3020060
合計 2229714170
5陽会(大正6年卒)
滝川 清一 三塁
藤原 英夫 右翼
友成 治 投手
武岡 四郎 左翼 川 栄治 二塁
今村 幡象 投手
箸倉 史桜 中堅 睦好 安夫 捕手
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