大正3年(2陽会)1914年

NO5

◎對クリケット(KCC)倶楽部野球戦
 大正3年
1030日(金)午後4時、東遊園地  審判 アーチャー
 KCC  200 024 04=
12
 神戸二中 000 100 01=2

(8回降雨コールドゲーム)
         打補刺四三安得
 〔ク 軍〕   撃    全
         數殺殺球振球點
 5 
F.Ailion  3231101
 7 
Crane    4000122
 3 
Roper    4171014
 98
 Beath    4020112
 4 
Christensen 4001011
 8 
Foote    3000211
 6 
C.Ailion  5300010
 1 
Swann    1300200
 2 
Lockart   41110011
    合計 
  34202337812 

 〔二中軍〕
 3 天 野   3090110
 2 松 本   2260200
 1 今 村   4900001
 5 宮 岡   3230121
 8 岡 本   3010120
 4 今 井   3240010
 9 小 野   2011000
 7 橋 本   0011200
 6 田 中   1400200

 
    合計    2119252962 

 十月三十日。我野球部は挑戦してクリケット倶楽部と本日午後四時東遊園地にアーチャー氏審判のもとに干戈を交えぬ。

 第一回。ク軍先攻、F・エリオン遊撃を襲ひて倒れしも、クレイン遊撃越の安打に出で、ロッパー四球を利し續くビースのグランダーを一壘手の逸せし間にクレイン先づ本壘に入りつヾいて捕手のパスボールにロッパー本壘に入る、ビース二壘をスティールせんとして成らず、クリステンセン二壘手の失に生きフット三壘越の安打に出でしもC・エリオン遊撃にゴロを得られクリステンセン三壘にフォースアウトとなる。我軍代り攻む。天野劈頭遊撃越の安打に出でしも松本、今村凡打し宮岡三振して敵代り攻む。

 第二回。スワン三振しロッカート二壘にフライを呈して名をなさしめ、F・エリオン中堅の失に生きしもクレイン三振して我軍攻む、ボックスに現われたるは我強打者岡本なり、長棍一打痛快なる中堅越の三壘打を戞飛ばしたるも後援續かず。

 第三回。兩軍凡打。

 第四回。敵凡打に終りしも我は一死の後宮岡二壘を抜く安打に出で續く岡本又もや右翼中堅を抜く痛烈なる三壘打を戞飛ばして宮岡を生還せしめしも岡本三壘本壘間に挟殺され今井フライを三壘手に得られて止む。

 第五回。ロッパー三壘を猛撃してこれを誤らしめ、左翼手の之を逸せる間に一擧二壘を奪ひビース遊撃手を誤らしめて生き、ロッパー生還す。
クリステンセン二壘を襲ひて殪れしもビースを生還せしめ、クン、ナットアウトに生きしも後援續かず代りて我軍攻む。
 小野四球を得しも橋本三振し田中遊撃を突きしも小野三壘上の露と消え天野三振して止む。(このインニングより右翼手退き中堅手右翼へ、クン中堅へ入る)

 第六回。ロッカー遊撃のエラーに生きF・エリオン四球を利しクレイン二壘に安打してフルベースとなるや、ロッパー、ボックスに現れて易々と中堅を抜く本壘打を飛ばせ一擧四點を得しめたるは敵ながらも天晴なり。
 續く三者皆凡打に終りぬ。我軍松本一壘手のエラーに生き盗壘を重ねて三壘に逼り本壘を窺ひたるも、敵中堅手の活躍は松本をして生還せしめず三壘に残壘となる。

 第七回。敵凡打或は松本の快腕に二壘に屠られなす所なし。我軍代りて攻撃す。今井劈頭一壘越の安打に出でしも後援續かず。時に日は西山に没せんとして妖雲襲ひ來たりぬ。

 第八回。敵一死の後クレイン遊撃手をあやまらしめしも、二壘にフォースアウトとなり、ビースの安打にロッパー生還し、續いてビース捕手のパスボールに生還クリステンセン四球を得、クン遊撃グランダーに生きC・エリオン中堅に安打して二騎轡をならべて生還しスワン遊撃を襲ひ斃る。

 我軍一死の後今村二壘のエラーに生き續く宮岡長棍一振右翼に三壘打を飛ばし今村を生還せしめしも三壘本壘間に挟殺せられ岡本Pゴロに斃れて止む。而して我軍尚活躍せんとせしも邉は暗く雨さえ加はりてゲーム續行すること能はず。

 惜しくも遂に八回のコールドゲームにて我軍の敗に歸せり、本日の敗因は明日の對シヤトル邦人朝日野球團との試合を慮りて多少選手のシートの移動を敢へてせしと審判の不公平とに據るといふも可なり。幸に他日之が復讐を試みられよ。
(YM生稿)