大正3年(2陽会)1914年

NO2

8月?日( )豊中球場
▽決勝戦
 大阪商業 001 200 200 01=6
 神戸二中 300 000 200 00=5

  (延長
11回)
       打安犠刺補失得
 〔神戸二中〕撃全牲殺殺
       數球球數數策點
 3 天 野 310
10011
 2 松 本 511
13511
 8 今 村 5000002
 5 宮 岡 5204131
 1 岡 本 4000
1010
 4 今 井 3000320
 9 小 野 2000000
 7 橋 本 1002000
 6 田 中 5102560
       
3351312414

 〔大阪商業〕
 6 豐 島 5014211
 7 藤 井 4000001
 5 中 村 4201120
 3 米 倉 300
11010
 2 松 川 2008200
 7 田 邉 2001900
 4 渡 邊 4002521
 8 山 口 2201001
 9 石 坂 4100002
       
3051301976 

 連日の大捷に今日の優勝試合には優勝旗を取り關西に覇をとなへんと思ひ喜び勇みてグラウンドに入る午後の一時前なりき、岩佐先生始め六、七人の卒業生諸兄及び二十人近くの校友は遠き神戸より今日の試合に應援せんとてこらる、生等はこの熱烈なるしかも燒るが如き愛校心ある此等の諸兄に對しこゝに深く感謝して巳まず。

一時三十分、試合は開かれぬ、大阪商業先攻

 第一回。敵の第一打者豊島ゴロを呈し捕手の失にて生きしが松本の快腕に弄せられ二壘の露となる、續く藤井三壘の失に生き中村四球に出で藤井二壘に進みついで三壘を得将に成すあらんとせしが米倉、松川、岡本の腕に弄せられ枕を並べて本壘に殪る何たる痛快ぞ。

 我軍代りて攻む天野第一打者の重任を荷ひてボックスに立ち劈頭の功名を成さんとせしが敵もさる者投手の投げだす球は疾風の如きが老練の天野敵の遊撃を失じらしめて生く、續く松本バントして生き今村二壘にゴロを呈せしに彼の失に生きたり、宮岡遊撃にフライを呈して死し岡本三壘にゴロを打ち其の失に生き天野、松本つゞいて生還す三壘に逼りし今村も捕手の失にて生還し我軍先づ三點を収む校友の喜び如何ばかり、今井、小野の二士共に本壘に憤死す。

 第二回。田邉四球に出で直ちに二壘をうばひ更に三壘に進まんとして刺る、田邉右邉に安全球を送りしも二壘を奪はんとして殪る、山口三振して止む、我軍橋本四球に出で二壘を奪はんとして刺る、田中滿身に力を入れて一揮すれば左翼に絶好の三壘打となる、續く天野矚望を負うて立ちしが四球を得て一壘に生き直ちに二壘を奪ふ、松三壘にデレクトを打ち危く安全球とならんとせしに彼見事に之をグロブに治めて直ちに二壘に投げ天野を殺す。

 第三回。石坂遊撃を失らしめて生き直ちに二壘を奪ふ、豊島左翼飛球に死し藤井遊撃を失らしめて生き豊島三壘に進む、中村遊撃にゴロを呈し殪れ石坂生還す、米倉ファウルを三壘に呈して止む、我軍無為。

 第四回。松川三振し田邉一壘にフライを呈して死す渡邊二死者の後に立ち二壘を失らしめ生き更に二壘を奪ふ、山口左翼に安打すれば渡邊脱兎の如く本壘に入る、山口左翼手の本壘に球を投ぜんとするを見て直ちに二壘を奪ふ、石坂三壘を失らしめ生く、これより先三壘を奪ひ在りし山口は直ちに生還し敵二點を得て同點となる、
 石坂盗壘に盗壘を重ねて三壘にあり、豊島遊撃にゴロを打ちしが田中よく石坂を本壘に刺す。
我軍、今井Pゴロに死し小野四球に出でしが橋本三壘にゴロを打ち小野二壘に刺る、田中遊撃にフライを送り死して止む。

 第五回。敵軍無為、我軍宮岡の安全打ありしも後援つヾかず。

 第六回。松川、田邉共に二壘ゴロに死し渡邊三振して止む、我軍今井二壘にゴロを送りて死し小野二壘を失らしめ生きしが橋本三振し、田中フライを投手に得られて止む。

 第七回。敵山口三振し石坂フライを三壘に呈して死し豐島二死者の後に立ち三壘を失らしめ生き更に二壘を奪ふ、藤井Pゴロを打ちしに投手の失にて生き豐島三壘逼る、中村重任を荷うて立ちしに左翼オーバーの二壘打を打ち一擧二點を得たり米倉フライを三壘に呈して死す。

 敵五點我軍三點我戦士如何でかこのスコアーで滿足すべき、天野劈頭右翼に安打して出で松本の犠牲球にて二壘に進み更に三壘を奪はんとして刺さる、今村三壘を失らしめて生き宮岡ボックス
に立ちて莞爾と笑へるかと思へば中堅右翼間に大飛球を飛ばしたりしに本壘打となり今村、宮岡共に本壘に入る我等は又敵と同點となった、應援團の喜び何にたとへん様もなかりき續く岡本二壘ゴロに死して止む。

 第八回。敵軍渡邊の安全打ありしも後援つヾかず我軍無為。

 第九回。石坂遊撃ゴロに死し豐岡三振し藤川左翼飛球に死して止む、我軍田中一壘ゴロに死し天野遊撃ゴロに死し松本二壘ゴロに殪る。九回にしても我軍の勝負決せず。

 第十回。中村中堅に安全球を送りて出で直ちに二壘を奪ひしが米倉、松川、田邉の三人枕をならべて本壘の露と消ゆ。我軍今村、宮岡共にフライを二壘に呈して死す、岡本投手を失しめて生きしに今井凡死して止む。

 第十一回。渡邊二壘を失らしめて生きしが二壘にて刺る、山口三振し石坂二死者の後に中堅に安全打を送りて生き直ちに二壘を奪ふ、豐島三壘にゴロを送り生く其の間に石坂三壘を得んとして走る天野のこれを三壘に刺さんとし投ぜし球の暴投なるを見て石坂本壘に入る、敵六點となる我軍代りて攻む、小野、橋本共に三振し田中フライを呈して死して止む。

 時に日正に暮れなんとし暗雲豐中のグランドの上を覆ひ我軍黙然たり、練習の足らざりしか将又運動場になれざりし故か。思ふに試合の初より胸中既に勝算ありしなり誰か此の敗績を豫想せしものぞ。(HF生)