〈神戸新聞〉神戸一中との定期戰のスタートと見られている試合。
『二中の野球部は恰も其の校の産声と同時に生まれ、一中に対し、歴史的に於て兄弟の關係有り、故に其の創戰当時、二中は一中に対し、態度極めて慇懃なりしも、最初の遊撃手として熱心なりし菅の一高に入るに及んで啓蟄の動機を与えたり。
◇即ち、爾後今日に到るも、毎年夏季休暇を利して一高より代々の団長が指導者として来たり、猛練習を行なう事となりしより、、俄然として其の技大いに揚り、新進の精英二中軍は、歴史ある一中軍を屠らんとの念切なるものありき。
◇時は来たりぬ、大正2年5月、遂に二中校庭に於て両虎相搏つ事とはなりぬ。満場唾を飲んで聲なく、活氣ある可かりし戰場は、寧ろ凄愴の気を以て満たされぬ。
◇斯くて、接戰の結果は人も我も予期せざりし二中軍が4対2にて芽出度も初陣の功名を擅にし、一中軍は無残や深き憤慨を落日の余光に止めにき。これ、一中軍とりては夢寝にだに忘れ能はざる恨なり。
《武 陽》
◎對クリケット倶楽部仕合第一回戰
大正2年5月28日(水)東遊園地
神戸二中 000 000 000=0
クリケット倶楽部 000 000 30A=3
打安犠三四得
撃全牲 死
〔神二中〕 數球球振球點
高 瀬 400000
松 本 400200
山 崎 200110
宮 岡 300000
岡 本 300100
今 井 300200
田 中 300000
森 崎 300100
兒 島 300200
総計 2800900
打安犠三四得
撃全牲 死
〔ク 軍〕 數球球振球點
Price
00000
H・christensen 00000
C・alion 10001
Roper 10000
F・alion 10110
T・christensen 00310
Crane 30000
Dacorta 10001
Peel
00201
総計
3270623
※個人打數は不明。
【大正3年(1914)】《武陽5号》大正3年3月發行
第一回戰に於て敗れたる我軍は、何でか空しく其侭黙して止むべき、勇氣彌々倍し、猛烈なる練習を打續け、再び挑戰状を送りて、六月十三日東遊園地に彼れと相見ゆることゝなりぬ。我が選手の胸裡に燃ゆるは前回の復讎の一念なりき。されば戰士の意氣大いに昂り、仕合前猛烈なる練習を行ひ、愈々四時半よりアーチャー氏審判の下に戰を始めぬ。
第一戰。我軍先攻す、高瀬巧みにボールを選びて四球となる、續く松本亦四球を利し、高瀬二壘を奪ふ、村井投手の失策に一壘を得、機を見るに敏なる高瀬本壘へと猛進すれば、捕手球を逸し劈頭一點を占め、應援團の歡喜、場内喝采暫しは鳴り止めず。
松本三壘を奪ひしが、宮岡三壘へフライを呈して死し、續く岡本、今井相次いでロッパーに封ぜられて好機を逸すF・エリオン遊撃の失に生き、クーン投手飛球に死し、C・エリオン中堅へ飛球を呈して斃る。其の間F・エリオン捕手の失に本壘を奪ふ、續くロッパー岡本に封じられて止む。
第二戰。田中劈頭遊撃を抜く安全球に一壘を奪ひ、次いで二壘を奪ふ、森崎捕手の失に生き、山崎投手飛球に死し、高瀬投手へのゴロを呈して斃れ、松本の一壘ゴロにて止む。T・クリステンセン遊撃飛球に死しピール、ミロー各岡本の快腕に弄せらる。
第三戰。兩軍凡打して無為に終る。
第四戰。田中再び遊撃を抜く安全球に敵を誤らしめしも、森崎三振し、山崎三壘ゴロに、高瀬投手ゴロに死して止む。C・エリオン二壘を抜く安全球に出で、續くロッパー内野へ安全球を呈して、共に盗壘せしも後援續かず。T・クリステンセン三振し、ピールは二壘に名をなさしめ、ミローも亦同じ運命に陥りて三死となる。
第五戰。松本よく一壘を奪ひしも、反って投手の為めに一塁に刺され、村井三振し、宮岡投手へ飛球を呈して斃る、クレイン投手より一壘に刺され、プライス左翼へ二壘打を呈し、F・エリオンの中堅安全球に生還す。クーン遊撃の失に生き、C・エリオン三振して一壘に刺され、次いでF・エリオン生還す。ロッパー左翼に大飛球を呈して名をなさしむ。此に彼の得點三點となる。
第六戰。岡本三振し、今井二壘手に名を成さしめ、田中投手より一壘にて刺さる。T・クリステンセン投手より一壘に刺され、、ピール中堅、左翼間に安全球を送りて生きしも後援空しく、ミロー一壘に刺され、クレイン亦二壘に飛球を呈して止む。
第七戰。森崎一壘に刺され、山崎大飛球を中堅に送りて名をなさしめ、高瀬一壘右翼間の安全球によりて進みしも、松本の三振にて止む。プライス再び中堅二壘間に安全球を呈し、F・エリオン右翼に大飛球を呈して、森崎に名をなさしめ、クーン三振して走らんとして捕手より一壘に刺され、二壘にありしプライス今井の手にて見事なるダブルプレーを演ぜらる。
第八戰。村井右翼越の安全球に一擧三壘を奪ひ、宮岡中堅飛球に死せしも、岡本投手ゴロに生き、村井機に乗じて急遽牙城を陥れて二點となる。今井投手の失に生きて一壘を奪ひしも、田中投手飛球に、森崎三振して止む。C・エリオン投手より一壘に刺され、ロッパー四球を利せしも、T・クリステンセン右翼へ飛球を呈して死し、反す球にロッパー再び今井の為めに刺されて、ダブルプレーを演ぜらる。
第九戰。是れぞ我軍最後の奮闘すべき時なりしも、如何せん山崎三振し、高瀬一壘を取りしも、反って投手より一壘に刺され、續く松本一壘に死して無為に終る。時に五時三十五分なり。兩軍のメンバー左の如し
大正2年6月13日(金)東遊園地 午後4時30分開始
◎對クリケット倶楽部第二回戰
神戸二中 100 000 010=2
クリケット倶楽部 000 030 00A=3
打安四三刺補得
撃全死
〔ク 軍〕 數球球振殺殺點
3B F.alion 3110122
CF T.T.kuhn
4002200
SS C.alion 4101000
P G.Roppor
31113150
RF T.christensen 4001000
1B Peel 31011000
2B Inslan 3001120
C Crane
30001010
LF Price
3200001
合計 3062727203+A
〔二中軍〕
3B 高 瀬 4110001
C 松 本 4011530
LF 村 井 4101101
CF 宮 岡 4000200
P 岡 本 40031110
2B 今 井 4002140
SS 田 中 4200200
RF 森 崎 4002210
1B 山 崎 4001910
合計 36421023202
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