☆神戸二中遂に優勝
☆十三A對九神港商業善戰
□第一回(神港零、二中三)二中は白鉢巻に最初から締めて懸る。神港は一死後秋田四球を利して吉岡三匍失に秋田二盗し永井二匍に吉岡詰殺されたが、走者三二壘に據り好機と見えたが三谷遊匍に野手克く止めて已む。
▼二中一死後楠見と木谷共に四球を利し宇野中右間を抜く二壘打を戞飛して楠見易々生還し、一點を先取すれば應援團狂喜する。難波亦中堅に安打して木谷と宇野相踵いで生還先づ三點を得、梅田捕前匍球、稻田一匍に神港漸く危地を脱する。
□第二回(神港零、二中四)二中の投手木谷の為に打撃を封ぜられて神港三者凡退し二中應援團勢に乗じて彌次り倒す。
▼二中一死後田中遊匍悪投に生き将積中堅越の絶好の三壘打を戞飛して田中易々生還。楠見二匍一壘低投に将積又生還。敵の陣容亂れたるに乗じ木谷遊匍に楠見二盗し宇野一匍に三壘に送られ暴投に楠見生還。難波投手越安打に木谷生還し一擧に四點を加へ氣勢を揚げる。
□第三回(兩軍零)神港應援團必死となって彌次り付けるが既に敵に呑れた神港は氣力衰へ一死後町田四球を利し二盗し秋田の一匍に三壘に送られたが吉岡の中堅大飛球を野手後退して巧捕し點を為すに至らず、二中は勝ちに乗じてスッカリ調子付く。
▼神港の名投手永井遂に帽子を脱いで奮闘すれば二中三打者其術中に陥って三振を喫し應援團も漸く息吐く。
□第四回(兩軍零)神港永井二匍失に生き(代走吉岡)三谷三振、生駒左前安打したが、丸泉三邪に凡死し町田(弟)右飛に好機を逸する。
▼二中三者凡退。
□第五回(兩軍零)神港無為。
▼二中一死後宇野三壘に難球を呈して過らせ二盗、難波の遊匍に送られて三壘に據ったが梅田三振して已む。
□第六回(神港六、二中零)神港吉岡四球を利し逸球に二壘を得永井二越安打して吉岡長驅生還、三谷左翼安打失に永井又長驅生還、尚三谷は逸球に三壘に據り續く生駒と丸泉共に四球を利して無死滿壘の好機を得、應援團も亦必死となって聲援に努め町田(弟)中堅に安打し三谷、生駒相踵いで生還、内海左翼に大飛球を呈し町田遊匍に斃れたが、秋田一壘に難球を呈して過らせ敵陣を撹亂し其間に丸泉と町田(弟)相踵いで生還、吉岡三匍に已んだが而も此回一擧に六點を恢復して頽勢を挽回し意氣大に揚る。
▼二中三者共永井投手の為めに弄殺される。
□第七回(神港一、二中零)(此時小雨ポツリポツリ堕ちる)神港永井中堅に二壘打を放ち三谷二飛後三盗し生駒二匍失に永井生還して同點となり試合は益々緊張し兩軍應援團も力の限りに彌次り倒し興味大に加はる、丸泉遊飛、町田(弟)右翼二壘打に走者三二壘に據ったが内海の三飛に已み、二中ホッと息を吐く。
▼二中三者凡退。
□第八回(神港二、二中六)神港一死後秋田投手頭上を抜いて安打し吉岡三匍失に生き永井二一間を抜いて二壘打を放ち秋田生還し三谷捕前軟打に捕手誤りて生き生駒三壘軟打に永井三壘に僅に生き丸泉投軟打に永井詰殺而も丸泉一壘に併殺され折角の好機を逸して仕舞ふ、而し一擧二點を勝越し神港應援團喜ぶこと限りない。
▼二中宇野三壘に内野安打し二盗、難波投飛失に生き宇野三盗後直に本壘を衝かんとし捕手牽制球を後頭に受けて僅に生還。梅田投匍に斃れたが、其間難波生還して得點は同點となり二中應援團は列を亂し無秩序を顧みず亂舞彌次り稻田三振、宇麼谷遊匍一低投に生き田中右翼安打し宇麼谷三壘を占め将積中堅に絶好の安打して宇麼谷と田中相踵いで生還、却って三點を勝越せば二中應援團の狂喜は寧ろ無節操の極に達し楠見四球、木谷死球に出で二死滿壘となった時打順は一巡して宇野左翼に安打し将積と楠見相踵いで生還、難波中飛に已んだが此回一擧に六點を加へて遂に勝敗の數を決する。
□第九回(神港零、二中A)神港最後の攻撃に入り二死後町田遊匍一高投に一擧二壘を占めたが秋田遊匍に已み掉尾の健闘も遂に及ばず十三A對九のスコアで神戸二中優勝の榮冠を得た。閉戰五時。
〔概評〕仇敵一中を破った二中と甲陽に復讐した神港の試合は實際好い優勝戰であることと思はせたが、而し一二回に於て神港の永井投手のコントロールのない間に二中に撰球とヒットに出られて七點を與へたので神港は随分意氣を阻喪させた。
然し四五回頃から永井投手も漸次コントロールもついて來て一方打撃に於ても今度は反對に二中投手の球を撰び打ち出してから一擧に六點を回復し試合は面白くなった。神港町田が八回にバントエンドランを遣ったのは不味い。
次打者が殆んど安打して居るのに一番打者が彼の様なプレーは一考を要する。此の凡死がなければ彼の場合未だ二點位は入れて居るかも知れない。神港が今少し以前に球を撰んで打って居たならば勝敗は逆になっていたであろう。
《武 陽》
◎對育英商業練習戰 大正10年9月27日(火)神戸二中
彼の挑戰に應じて本校々庭にて試合す。我校先攻。第二回一點、第四回六點、第五回一點、第六回二點、第七回三點計十三點を得たるに對し、育商甚だ振はず第六回長谷川三壘打に出で後援を得て生還せしのみ。七回ゲイム、十三對一にて我軍大勝せり。
神戸二中 010 612 3=13
育英商業 000 001 0=1
〔本校〕 〔育英〕
961 将 積 56 長谷川
696 楠 見 4 石田佐
16 木 谷 61 梶 原
9 村 尾 8 工 藤
7 宇 野 15 石田眞
8 難 波 3 小 原
3 梅 田 2 萩 原
4 稻 田 7 土 居
2 宇麼谷 9 森 本
8 田 中
△三壘打=木谷、宇野、田中及び長谷川
《武 陽》
〔岡山遠征記〕
六高主催近縣中等學校野球大會、十月十五日より三日間同校庭に擧行され、吾校其招聘に應じ、鐵路六十哩岡山に遠征し、奮戰大に努め、高松、姫路及び津山の各中學チイムを撃破し優勝せり。
□本校8對高松3 大正10年10月16日(日)六高
午前十時三十五分開戰。清水、藤田兩六高選手交審。
第一回。我軍先攻。将積四球に出で二三壘連盗一死後難波四球、投手の暴投に将積生還、宇野の安打に難波還り、宇野も亦連盗と捕逸に入壘先づ三點を贏つ。
△林劈頭二失に出でゝ三壘まで到しも大事なし。
第二回。我軍無為。
△水原、木村四球に出で、二死後中野更に四球に滿壘となりしも、一番林三振。
第三回。将積再び四球に出で、梅田の二失、投手の牽制悪投及び宇野の一匍を利して生還。木谷四球を選び、走者二三壘に到りしも楠見三振して止む。
△木谷の肩荒れしものか四球續出、可惜敵に三點を與へて四對三の接戰となる。即ち水原四球に出で、續く木村、三井何れも手酷き死球を喫して無死滿壘の危機迫る。河野の軟打木谷焦ってミスし水原先づ生還。木村三本壘間に挟殺され一死となりしも、中野二壘に安打して、三井還り、河野も亦一壘手の本壘暴投に命拾ひして生還、中野二盗に斃れて後、林楢も四球の恩恵に浴し二壘を盗みしも前田三振に敵の逆襲漸く止む。
第五回。梅田内野安打、難波遊失、宇野の遊匍は可惜梅田を三壘に詰殺せしも木谷の一壘安打に難波生還又も一點を加ふ。
△敵軍凡退。
第六回。兩軍無為。
第七回。愈々ラストインニングなり。我軍健棒一時に振ひ将積を初め梅田、宇野、楠見の諸勇士安打を連發し其間木谷の犠牲飛球あり、此の回又も三點を収め大勢全く決す。
△敵軍奮起せしも時己に遅し。中野三匍、林、前田共に三振。萬事休矣。閉戰零時二十五分。
神戸二中 301 010 3=8
高松中學 003 000 0=3
〔本 校〕 打得安犠盗三四失
數點打打壘振球策
2 将 積 23102020
3 梅 田 41200001
5 難 波 32001010
7 宇 野 42202000
1 木 谷 20112010
6 楠 見 40100101
4 稻 田 30001111
9 宇麼谷 30000100
8 田 中 30002100
計 2887110453
〔高 松〕 打得安犠盗三四失
數點打打壘振球策
7 林 30001210
8 前 田 40000300
5 宮 武 30000000
6 柏 原 30000001
2 水 原 11001120
3 木 村 10000010
4 三 井 21000201
9 河 野 21010100
1 中 野 20100011
計 213112953
《武 陽》
□本校4A對姫路2 大正10年10月16日(日)六高
高松中學を一蹴せる我軍は、同日更に岡山中學に勝てる姫路中學と對戰する事となりぬ。思へば是れ今夏の復讐戰なり。吾軍豈奮起せざるべけんや。
三時十分尾崎主審宣戰。長崎壘審の下に開戰。
第一回。敵先攻。二死後原右翼安打に出でしのみ。
△我軍も亦二死後木谷中堅に安打せしが、宇野の遊匍に封殺さる。
第二回。敵軍二死後滿壘となりしも、佐伯凡飛。
△難波内野安打に出でしも、楠見(代走宇野)の二匍に詰殺の憂目に逢ふ。宇野二壘を盗み、稻田の一匍に三壘に進めば、宇麼谷の飛球右翼「おぞくも」失して、宇野生還一點を先取す。
第三回。敵軍無為。
△我軍走者ありしも入らず。
第四回。兩軍無為。唯楠見の快打敵の膽を寒からしめしものあり。
第五回。品川の難飛球宇野疾走よく掴む。佐伯病中の楠見を失せしめて出で後援と盗壘に三壘に據りし時原の一打難波トンネルして生還。遂に同點となる。我軍は振はず。
第六回。敵軍無為。
△我軍宇野右翼に安打し二盗壘、難波三遊間に安打して宇野を三壘に送り、難波型の如く二盗を試みしに、投球する機に乗じて宇野猛然本壘に殺到す。焦れる佐伯ホームに暴投し宇野無事入壘。楠見四球に續きしも難波捕手に謀られて死し、稻田三振す。
第七回。八番福澤左翼に三壘打し、品川の遊撃越安打に生還、再び同點となる。
△宇麼谷二飛失に出で、捕手の牽制球を一壘手二壘に暴球するに乗じて壘を進む。田中の軟打を三壘手周章して兩者セイフ。一死後梅田絶好のバントを匍はして宇麼谷、田中を入れ、吾軍ために貴重の二點を獲得す。
第八回。遊失及び二四球あり。二死滿壘となりしも、福澤の三振に危機を脱す。
△難波三度安打せしも後援なきを如何にせん。
第九回。敵軍最後の攻撃も効を奏せず。品川左飛、佐伯遊匍、小林三振に事終んぬ。時正に五時。吾軍守備よく復讐を成し遂げぬ。
當試合は優勝戰以上の激戰にして、観衆は該地にては希有の好模範試合なりと賞讃し合へり。
姫路中學 000 010 100=2
神戸二中 010 001 20X=4
〔本 校〕 打得安犠盗三四失
數點打打壘振球策
2 将 積 40001100
3 梅 田 20010100
1 木 谷 40100101
7 宇 野 42102100
5 難 波 40301002
6 楠 見 30100013
4 稻 田 40000200
9 宇麼谷 31000000
8 田 中 21011000
計 304625616
〔姫 中〕 打得安犠盗三四失
數點打打壘振球策
6 佐 伯 51001002
2 小 林 50000200
3 原 40100001
1 氷 室 40000000
8 北 條 30000310
7 瀬 戸 40000200
4 淵 岡 20000021
9 福 澤 41100101
5 品 川 40200000
計 352401835
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